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令和5年度答申第1号

更新日:2023年6月5日 印刷ページ表示

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人は、令和4年9月26日付け生活保護停止決定処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める理由として、次のとおり主張している。

・ 処分庁は保護の停止をしているが、令和4年8月5日より○○月○○日までの生活保護費を差し入れている。そのため、処分庁も本件処分の取消しについて認めていることと考える。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり、本件審査請求を棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

 生活保護問答集について(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「別冊問答集」という。)問7-15において、「被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は刑事行政の一環として措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ない」とされている。

 処分庁は、審査請求人が逮捕されたことを文書による照会で確認した上で、本件処分を行った。これは別冊問答集問7-15に基づく事務処理であるといえる。

 したがって、本件処分は、法令等の定めるところに従って適法かつ適正になされたものであり、違法又は不当であるとはいえない。

 なお、審査請求人は、処分庁が生活保護費を差し入れたことが、処分庁自身が本件処分の誤りを認めたことであると主張しているが、処分庁が差し入れた生活保護費は保護開始から本件処分までの期間の保護費を日割りで支払ったものであり、この主張は認められない。

第4 調査審議の経過

 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。

 令和5年 4月14日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受

 令和5年 4月28日 調査・審議

 令和5年 5月26日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1 審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2 本件処分に係る法令等の規定について

(1) 生活保護の補足性

 生活保護法(昭和25年法律第144号)第4条第1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と、同条第2項は、「民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」と規定している。

(2) 保護の停止の規定

 生活保護法第26条は、「保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。」と規定している。また、生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)第10 問12において、保護を停止すべき場合は、「(1) 当該世帯における臨時的な収入の増加、最低生活費の減少等により、一時的に保護を必要としなくなった場合であって、以後において見込まれるその世帯の最低生活費及び収入の状況から判断して、おおむね6か月以内に再び保護を要する状態になることが予想されるとき。」、「(2) 当該世帯における定期収入の恒常的な増加、最低生活費の恒常的な減少等により、一応保護を要しなくなったと認められるがその状態が今後継続することについて、なお確実性を欠くため、若干期間その世帯の生活状況の経過を観察する必要があるとき。」と規定されている。

(3) 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の規定

 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)第182条第1項は、「被留置者の処遇(運動、入浴又は面会の場合その他の内閣府令で定める場合における処遇を除く。)は、居室(被留置者が主として休息及び就寝のため使用する場所として留置業務管理者が指定する室をいう。以下この条及び第212条において同じ。)外において行うことが適当と認める場合を除き、昼夜、居室において行う。」と規定している。また、同法第186条第1項では、「被留置者には、次に掲げる物品(書籍等を除く。以下この節において同じ。)であって、留置施設における日常生活に必要なもの(第188条第1項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は支給する。」と規定している。

 さらに、同法第199条では「留置施設においては、被留置者の心身の状況を把握することに努め、被留置者の健康及び留置施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」と規定している。

(4) 被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合の最低生活費

 別冊問答集問7-15において、「被保護者が被疑者等として警察署に留置、拘束された場合は、刑事行政の一環として措置されるべきものであることから最低生活費の計上は必要ない」とされている。

3 本件処分の妥当性について

 処分庁は、審査請求人が逮捕されたことを文書による照会で確認した上で、本件処分を行った。

 被留置者については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律により、被留置者の状況に応じた適切な処遇がされることになっており、起居すべき居室が提供され、衣類及び寝具、食事及び湯茶、日用品、筆記用具その他の物品が貸与又は支給されるとともに、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき又はこれらの疑いがあるときは、医師による診療等が行われる。

 したがって、被留置者は、留置施設に留置されている期間において、最低限度の生活を維持することができない者に該当しないこととなることから、保護を行う必要性に欠けるといえる。

 審査請求人の勾留期間中における処遇は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づいて措置されることとなるため、生活保護法第26条に規定する「被保護者が保護を必要としなくなつたとき」に該当すると考えられ、処分庁が審査請求人に対する保護を停止する判断をしたことは、違法又は不当であるとはいえない。

 以上のことから、本件処分には、これを取り消すべき違法又は不当な点はないものと認められる。

第6 結論

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり、答申する。

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