本文
令和3年度 病害虫発生予察特殊報 第1号(サツマイモ基腐病)
更新日:2021年6月14日
印刷ページ表示
令和3年度 病害虫発生予察特殊報 第1号 サツマイモ基腐病(PDFファイル:326KB)
本県において、かんしょでサツマイモ基腐病の発生が初めて確認されました
* 特殊報とは、新たな病害虫を発見した場合及び重要な病害虫の発生消長に特異な現象が認められた場合に発表する情報です。
1 特殊報の内容
- 対象病害虫名:サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)
- 学名:Diaporthe destruens(Harter) Hirooka,Minosh. & Rossman
- 発生植物:かんしょ(サツマイモ)
- 発生地域:県東部地域
2 発生概況
(1)発生確認の経過
令和3年5月、県東部地域のかんしょ栽培ほ場において、茎葉部の黄化や種いもの腐敗症状が確認されました。現地ほ場で採取したかんしょの茎葉の診断を農研機構植物防疫研究部門に依頼したところ、サツマイモ基腐病と同定されました。
(2)国内の発生状況
本病は平成30年に沖縄県で初めて確認され、その後、鹿児島県、宮崎県、熊本県、福岡県、長崎県、高知県、静岡県、岐阜県で発生が確認されています。
3 病徴および病原菌の特徴
- 苗床では、はじめに葉巻や葉の黄化が起こって(図1)、苗の基部が暗褐色~黒色になり、やがて種いもが腐敗してきます(図2)。
- 本ぽでの発病は、ほ場の一部で株が黄化して生育不良(図3)となり、株の地際部が暗褐色~黒色に変色します。被害が進行すると、茎葉の枯死や塊根の腐敗を生じます。
- 発病株には多数の胞子が形成され、雨水等により内部から胞子が漏出します。胞子は、激しい風雨やほ場の停滞水により畝及び畝間に沿って拡散するため、周辺の株に感染が拡大します。
- 本菌の宿主植物はヒルガオ科植物で、罹病した塊根やつるで伝搬します。また、植物残渣上で越冬し、それが翌年の伝染源となります。
4 防除対策
- 購入した苗は、苗消毒がなされているか確認し、消毒されていない場合は本病に登録がある薬剤で苗を消毒してください。
- 本病原菌はサツマイモの残渣で越冬し、翌年の一次感染源になるため、ほ場の巡回を行い、発病した株(茎や塊茎)は速やかに抜き取り、ほ場内や周辺に残さないよう適切に処分してください。
- 発病株の除去前後には、周辺株への感染を防ぐため、銅剤(Zボルドーまたはジーファイン水和剤)やアミスター20フロアブルの散布を行ってください。
- 採苗する場合は、腐敗等のない健全な種いもを使用し、本病が発生した苗床では採苗しないでください。苗の採取は株の地際部から5センチメートル以上切り上げて行い、ベンレート水和剤またはベンレートT水和剤20を用いて、採苗当日に苗消毒を行ってください。なお、消毒液は必ず使用する当日に調製したものを用いてください。また、採苗時のハサミは、こまめに消毒してください。
- 本病が発生したほ場で使用した農機具、長靴、資材等を別ほ場で使用する場合は消毒や洗浄を十分に行ってください。
- 排水が不十分な場所で発病しやすいため、ほ場内の排水対策を実施してください。
- 本病が発生したほ場では連作を極力避けて、他作物との輪作を行ってください。
- 植付前には、ほ場の土壌消毒を行ってくださ
- 本病に対する詳細な防除対策については、以下の農研機構生研支援センターイノベーション創出強化研究推進事業(01020C)にて作成されたマニュアル「サツマイモ基腐苗の発生生態と防除対策<外部リンク>」を参照してください。
図1 苗床での葉の黄化
図2 苗基部の黒変と種いもの腐敗
図3 ほ場における株の生育不良
(注1)図1及び3は農研機構生研支援センターイノベーション創出強化研究推進事業(01020C)令和2年度版マニュアル「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策」より引用
(注2)農薬を使用する際には、ラベル等を確認し使用基準に従って適切に使用してください。