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令和元年度 病害虫発生予察特殊報 第1号(トルコギキョウ斑点病)
更新日:2019年7月5日
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令和元年度 病害虫発生予察特殊報 第1号 トルコギキョウ斑点病(PDFファイル:287KB)
県内において、トルコギキョウ斑点病の発生が初めて確認されました。
*特殊報とは新しい病害虫を発見したり、あるいは、例年と異なる発生消長が確認されるなど、特異な現象が認められたときに発表する情報です。
1 特殊報の内容
- 対象病害名:トルコギキョウ斑点病
- 病原菌名:Pseudocercospora nepheloides(= P.eustomatis)
- 発生作物:トルコギキョウ
- 発生地域:県東部地域
2 発生概況
1 発生確認の経過
令和元年5月に県東部地域の施設トルコギキョウほ場において、葉にすす状の斑点を呈する株が確認されました。農業事務所、技術支援課及び農業技術センターが現地の発生状況を調査し、同定を横浜植物防疫所に依頼したところ、Pseudocercospora nepheloidesによるトルコギキョウ斑点病であることが判明しました。
本病は、平成20年に福岡県で初めて確認され、その後、平成29年に高知県、大分県、熊本県、宮崎県、長崎県、平成30年に和歌山県、沖縄県、広島県、福島県、宮城県、島根県、千葉県、岡山県、栃木県で報告されています。
3 病徴および被害
発生初期は、葉の表に5~10ミリメートル程度の退緑斑を生じ、後に葉の表裏に黒から灰色のすす状病斑(写真1、2)が形成されます。病斑上には、小黒点(分生子座)が多数形成され、顕微鏡で観察すると分生子の形成が確認されます。病斑は下位葉を中心に発生し(写真3)、その後、上位葉へと進展します。
4 病原菌と発生生態
- 本菌は糸状菌の一種で不完全菌に属します。
- 分生子座は濃褐色で直径26.9~45.6マイクロメートル(写真5)、分生子柄は淡褐色から褐色で子座上に束生します。分生子は無色(淡オリーブ色)、倒棍棒状で、大きさは25.7~43.3マイクロメートル×3.8~4.9マイクロメートル、0~7個の隔壁を有します(写真4)。
- 本病は盛夏を除き、ほぼ年間を通して発生しますが、特に春から秋の多湿条件下で多発し、育苗期にも発生します。
- 生態や伝染環についての詳細は不明ですが、育苗中及び本ぽで発生し、病斑上に形成される分生子により伝染します。
- 現在確認されている宿主はトルコギキョウのみです。
5 防除対策
- 多湿条件で発生が助長されるため、施設内の通風及び換気に努めてください。
- 発生を認めた場合は、発病葉を取り除いたのち薬剤防除を行ってください。
- 罹病株の残さは伝染源となるため、施設外に持ち出し適切に処分してください。
写真1 すす状病斑
写真2 すす状病斑(大型)
写真3 ほ場での発生状況
写真5 病斑上の分生子座