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文化財保護審議会 平成23年度第1回開催結果
1 開催日時
平成23年8月9日(火曜日)午後1時30分~午後3時30分
2 場所
群馬県庁 第1特別会議室(29階)
3 出席者
審議会委員19名
4 議案
報告事項
- 群馬県文化財保護審議会臨時委員の任命について
- 群馬県内の国・県指定等文化財件数について
- 平成23年度県指定文化財保存事業について
- 県指定文化財の現状変更等について
- 史跡上野国分寺跡・史跡観音山古墳の管理について
- 東日本大震災における県内文化財の被災状況について
- 東日本大震災への対応状況について
- 部会報告(非公開)
- その他
審議事項
1 群馬県指定文化財の指定について
「針山の天王ザクラ」(はりやまのてんのうざくら)
2 群馬県指定文化財の指定解除について
「刀 無銘(伝元重)」(かたな むめい(でんもとしげ))
「脇差 無銘(伝吉房)」(わきざし むめい(でんよしふさ))
「刀 銘土佐藩工左行秀造之」(かたな めいとさはんのたくみひだりゆきひでこれをつくる)
「短刀 銘源左衛門尉信國」(たんとう めいみなもとのさえもんのじょうのぶくに)
「脇差 銘上州住憲重作」(わきざし めいじょうしゅうじゅうのりしげさく)
「刀 銘備州長船藤原朝臣出雲守在光作」(かたな めいびしゅうおさふねふじわらのあそんいずものかみありみつさく)
5 議事概要
報告事項
報告事項1
(事務局(資料に基づき説明))橋本政宣氏(福井県在住・東京大学名誉教授・福井県文化財保護審議会委員・舟津神社宮司)を臨時委員として任命。期間は、平成23年6月1日から平成24年3月31日まで。所属部会は歴史資料部会。調査対象は浄土真宗妙安寺所有の室町末及び江戸初期の3天皇(後柏原・後陽成・霊元天皇)の宸翰3件。
報告事項2
(事務局(資料に基づき説明))平成23年3月に新たに「小野直文書」「木造阿弥陀如来立像」の2件を県報告示した。また、平成23年5月に「利根川・渡良瀬川合流域の水場景観」が国重要文化的景観の選定の答申を受けた。近々官報告示される予定である。
報告事項3
(事務局(資料に基づき説明))修理・防犯設備等様々な事業を行っている。4月補正で4件の県指定文化財について新たに補助事業を行うこととなった。
報告事項4
(事務局(資料に基づき説明))平成23年1月から6月までの現状変更等は、史跡が1件のほかは天然記念物である。毀損の届出については震災被害の状況ということで別途掲載。
報告事項5
(事務局(資料に基づき説明))史跡上野国分寺跡の管理及び利用状況
お祭りの開催や草刈りボランティア等、地元地区・愛好会の活動が積極的である。今後も地元・愛好会と連携し、史跡の維持管理・活用に結び付けていきたい。
県主催で毎年講演会を行っているが、今回は群馬デスティネーションキャンペーンの一環として9月半ばに国分寺跡周辺散策という形で予定している。
史跡地内のプレハブの撤去作業を開始した。8月中に撤去する予定である。
昨年度は5,801人がガイダンス施設を見学した。11月に天平の道進入路が完成し、関連するイベントを行い、多くの人が来場した。
(事務局(資料に基づき説明))史跡観音山古墳の管理及び利用状況
小学校の団体見学の利用が非常に多い。昨年度の見学者数は15,910人である。東京方面から毎年のようにきている学校がある。県立歴史博物館も一緒に見学することが多い。
報告事項6
(事務局(資料に基づき説明))黄色部分は既に復旧ないし修理が済んでいる。特に東毛方面の被害が目立っている。
報告事項7
(事務局(資料に基づき説明))震災直後から、市町村教育委員会を通じて被災状況調査を行った。被災県指定文化財の修復については、4月補正で4件の修復に着手し、早期の修復に取り掛かっている。また、県内への観光客数の回復と観光地及び観光産業への支援のため、文化財保護課職員が添乗し解説するという触れ込みで文化財見学ツアーを3回実施した。
(委員)被災した文化財の修復が不可能の場合はあるか。
(事務局)修復は市町村と検討をしているが、このまま様子を見守るしかないというものもあり、今後どうするかをじっくり検討するということで留保している場合もある。
報告事項9
(事務局(資料に基づき説明))「歴史力の発掘」「歴史力のネットワーク」「歴史力の情報の発信」を内容とした新事業を考えている。
(委員)群馬という枠を少し広げて物事を考える、連携していくという機運が出てきているようである。文化財を考える場合に非常に重要な示唆だと思う。そのようなことは子どもたちの教育に資するものと思う。
(事務局)自分にとって利便性の高いところへ行き来をするのが実態である。従前からそのような人間の交流があったから行われることであり、そこに住んでいる人たちが住みやすいように色々な交流が図れるようにしたいと考える。
(委員)基本的なところをきちんと見直す等、基礎的な研究が非常に重要であると考える。そこからもう一度正しく地域を把握して、色々な見解を考えて、平行して基礎的な部分をきちんと押さえていくことで更に群馬県の地域を対外的にも正しく伝えていくことができ、従来理解していたことと違う側面が新たに出てくるような気がする。
(事務局)基礎的な調査研究をして、資産というべき物の過程を明らかにしないことには、どう活用するかということも見えてこない。十分にそれを踏まえていきたい。
(委員)養蚕農家は県指定のものは1件もない。調査がほとんどされていない。きちんとした位置付けをすることが重要である。
(委員)生活文化に関するものは非常に調査が遅れている。調査・研究されることで指定ができる。指定をしていかないと「かつてあった。」ということになってしまう。子どもたちにとって、「群馬に生きて、生まれて育ったことに誇りを持つ。」ということを学ぶために、きちんと調査し、伝えていくことが必要である。
(事務局)専門的な意見を聞かせていただいた上で、その結果を受けて、行政で総合化していくことが今の時代求められているのではないかと思う。
(委員)かつては、民俗学というものは群馬県は誇りにしていたが、現在の研究状況はどうか。
(委員)今は一段落している状態であるが、研究者自体は個別に取り組んでいる。
(委員)粉食文化は大切な問題かと思う。
(委員)群馬の特徴だとアピールできるものだが、総合的な研究がされていない。
(委員)養蚕が上州のかかあ天下の基礎だと思うが、そういう点で、例えば「かかあ天下」を民俗文化財に考える発想があってもよいのでは。
(委員)よい発想である。群馬をあらわすものであり、それによって全部生活がつながっている。目に見えない、しかし皆が知っていることでも全県的な調査ができれば、指定しやすくなっていく。
(委員)食というものは色々な側面がある。歴史的なものをきちんとこの風土の中に残していくということが我々の仕事であり、子どもたちに伝えていかなくてはならないことである。
(委員)おきりこみはにぼうとうとも言っているのか。
(委員)ところによって違うので、どちらでも正しい。
審議事項
審議事項1
(事務局(資料に基づき説明))
(委員)「文化年間の銘が入っている」ということであるが、実際にはどのような銘が入っているのか。
(事務局)判読が難しく、解釈に問題がある部分がある。
(事務局)調査の中で読み取れることは、「文化十五年五月吉日」であるが、実は文化十五年というのは五月がない。その前に年号が改元になっているが、その情報がこちらにはきていなかったということだと思われる。「十五年」と読めるということである。
(委員)そうならば読めるとおりに書いておけばよいのではないか。干支は入っていないのか。
(事務局)干支は全く読めない。
(委員)読めない部分を含めて、祠にはこの銘文があるということをきちんと書いておく方が概要としてはしっかりするのではないか。
(事務局)そのようにさせていただく。
(委員)千明家には何か資料がないのか。
(事務局)調べていただいたが、特に何も出てきていないので、祠の由来等は分からない。
(委員)桜の木と祠の関係がよく分からない。年号があるというのは分かるが、それが桜の木の性格を説明するものにならないような気がする。
(委員)明治の神社の明細帳の中で、その字の中で天王様と呼ばれているところはあるのか。旧地名であるかもしれないし、そういう点があればやはり考察した方がよいのではないか。
(事務局)地元では天王ザクラと呼んでいるが、天王様と呼ばれている祠があるということを説明しないと天王ザクラの名前の由来にならない。祠についてはそれほど資料が残っていないので、祠の説明をしないことには名前の説明がつかないが、その辺をどのように表記したらよいのか。
(委員)指定をすることはなんら問題はないが、一般に通じるような名称を指定名称に使うということはいかがなものか。通称を使うと逆に曖昧なことになってしまうのではないか。学術用語を使うべきではないか。
(委員)天王ザクラは地域に染み込んでいるのではないか。名称は議論していただきたい。
(事務局)名称を付けるときに地元市町村の意見を聞いている。指定名称は必ずしも種の名前が名称になっているものばかりではない。そのようなことも参考に検討いただきたい。
(委員)この名称でよいのではないか。
《委員 名称は「針山の天王ザクラ」とし、指定に関し異議なし》
(審議会長)審議いただいた結果、「針山の天王ザクラ」については、諮問どおり指定文化財とすることで答申する。
審議事項2
(事務局(資料に基づき説明))
(委員)滅失は刀だけか。
(事務局)最終的にこの6本の刀剣だけである。
(委員)市町村教育委員会・県教育委員会も個人の所有物というのは悉皆調査をすべきであるが、調査し難い面もあり、つい手を抜いてしまうことになってしまう。何年かに一度は力を入れて調査をするべきである。件数がこんなにも多いのはやはり問題であり、心すべきである。
(事務局)今後は追跡調査を毎年徹底して、このようなことが繰り返されないようにしていく。
《委員 指定解除に関し異議なし》
(審議会長)審議いただいた結果、「刀 無銘(伝元重)」ほか5件の重要文化財を指定解除とすることで答申する。