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個人情報保護審議会諮問事件第20号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

1 件名

 「貴院訪問看護室にある請求者の全個人情報」の診療情報非開示決定に対する審査請求

2 諮問庁・処分庁

 群馬県病院管理者・精神医療センター院長

3 開示等決定年月日、内容及び理由

  1. 平成21年10月14日 非開示決定
  2. 非開示理由
  • 条例第13条第1号該当
    開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるため。
  • 条例第13条第7号ハ該当
    個人の指導、選考、判定、診断その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため

4 不服申立て

  1. 申立年月日 平成21年11月30日
  2. 趣旨
    本件処分を撤回して、本件個人情報の開示を求める。
  3. 理由
    平成17年9月8日に最高裁が示した「説明義務違反」に相当する。この最高裁の判例はインフォームド・コンセント(説明と同意)を強く求めた判断である。たとえ条例がどうなっていようと判例はより効力が強く、判例に反する条例の規定は無効である。また、諮問庁の主張は、厚生労働省のガイドラインにまったく触れておらず、国の政策を愚弄するものである。

5 諮問年月日

 平成21年12月25日

6 審議会の判断

  1. 結論
    群馬県立精神医療センター院長の決定は、条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。
  2. 判断理由

ア.条例第13条第1号該当性について

 本件個人情報は、処分庁が請求人に対して行っている訪問看護に関する記録であり、諮問庁は、本件個人情報のすべてが条例第13条第1号に規定する「開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある」情報であると主張している。

 一般に精神医療において、患者への診療情報の開示は、医療機関と患者との信頼関係や、開示が患者の精神状態に与える影響といった複雑な要素を、高度に医学的、専門的な見地から判断する必要があると考えられるが、この判断は、医学上の専門的な学識経験を持つとともに、現在も請求人の診察及び治療に携わっている担当医師にまず求められるべきものといえる。

 本件処分は、請求人が本件個人情報の開示を受けることで特定の事柄に興味を奪われ、現在も継続中の治療行為に支障が生じ、結果として請求人本人の病状悪化等が懸念されるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものであるが、審議会が本件事案についての概要の説明を諮問庁及び処分庁から受けたところでも同様の見解が確認でき、そしてこの医師の判断は、実際に審議会が見分した本件個人情報の記載内容と十分な整合性を有する合理的なものと認められるため、当審議会においてもこれを尊重すべきであると考える。

 よって、本件個人情報は、条例第13条第1号に該当するものと認められる。

イ.条例第13条第7号ハ該当性について

 審議会が諮問庁及び処分庁に確認したところ、請求人の本件請求を含む行政機関等への請求、要求等の行為自体が、請求人の精神障害による症状の一環であると診断されているとのことであり、開示が請求人の症状に与える影響についてはより一層慎重に検討し、判断する必要がある。

 本件処分は、本件個人情報を開示することで請求人と処分庁との間で構築してきた信頼関係を失うこととなり、それにより以後の診断・治療方針あるいは訪問を受け入れられなくなるなど悪影響を与えることになるとの担当医師の判断を踏まえて行われたものであるが、この担当医師の判断には、社会通念上合理性を欠くと認められる特段の事情は見受けられないため、当審議会においてもこの判断を尊重すべきであると考える。

 よって、本件個人情報は、条例第13条第7号ハに該当するものと認められる。

7 答申年月日

 平成22年5月18日(個審第138号)