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個人情報保護審議会諮問事件第17号

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

1 件名

 「カルテ(入院の期間・全部)」の診療情報非開示決定に対する審査請求の件

2 諮問庁・処分庁

 群馬県病院管理者・精神医療センター院長

3 開示等決定年月日、内容及び理由

(1)平成21年3月5日 非開示決定

(2)条例第13条第1号該当

 開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるため。

4 不服申立て

(1)申立年月日 平成21年4月13日

(2)趣旨

 上記の非開示決定の取り消しを求める。

(3)理由

 処分庁は、条例第13条第1号に該当する非開示情報であるとしているが、これは誤った条例の解釈である。確かに条例は本人を害する情報の場合は非開示と規定しているが、請求人の場合は該当しない。なぜならば、請求人自身が自分の生命、健康、生活のために自分自身の入院に係る病気について知る権利があるからである。インフォームド・コンセントについて県立病院として範を示していただきたい。

5 諮問年月日

 平成21年5月14日

6 審議会の判断

(1)結論

 群馬県立精神医療センター院長の決定は、妥当ではなく、これを取り消して改めて決定を行うべきである。

(2)判断理由

 条例第13条第1号は「開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがあるとき」と規定しているが、これは自己情報の開示を受けることが本人の利益にならない場合には非開示とすることを定めたものである。しかしながら、既に説示したとおり、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされるべきであることを考えると、この「おそれ」の判断に当たっては、単に確率的に起こり得るというだけでなく、法的保護に値する蓋然性が求められるというべきである。

 諮問庁は、本件個人情報のすべてが条例第13条第1号に該当するとしたことについて、本件担当医等が「開示することにより請求人の病状を強化・悪化させてしまう可能性が高い。」と判断したことが根拠である旨主張する。

 しかしながら、本件開示請求は請求人が精神医療センターを退院してから約1年半後に行われたものであるところ、諮問庁から提出された理由説明書では、本件担当医等がどのようにして請求人の現況を確認し、具体的にどのような医療的判断を行ったのかが不明確であった。このため、審議会は諮問庁に説明を求めたが、平成19年8月24日の請求人の退院から平成21年3月5日付けの本件処分の間に、本件担当医等による診察等は行われておらず、また、諮問庁及び処分庁は退院後の請求人の健康状態等の詳細を診察等以外の方法によっても把握していないとのことであり、本件担当医等の判断の根拠や具体的内容については確認することができなかった。

 このような諮問庁の説明状況を鑑みると、本件担当医等の医療的見識そのものを否定するものではないが、審議会としては当該判断を十分な合理性を有するものとして尊重し、条例第13条第1号を理由に本件個人情報のすべてを非開示としたことを妥当であると結論づけることはできない。

(3)留意事項

 なお、諮問庁は、本件個人情報のすべてを非開示とする主張しか行っておらず、個々の個人情報について非開示とする理由を整理して説明していないことから、審議会では、再度の決定を行うに当たっての留意事項について、念のため意見を述べるものとする。

 ア 条例第13条第1号該当性の再検討について

 本件個人情報としては、まず、日時、検査結果、請求人の行動態様及び発言内容並びに本件担当医等が請求人に説明した内容等が認められる。しかしながら、審議会で本件個人情報を見分し、請求人が提出した意見書等の内容を確認したところ、請求人はこれらの情報について概ね把握しているものと考えられ、一般にこのような本人が当然に知り得る情報については、特段の理由がない限り条例第13条第1号該当性は認められず、原則として開示すべきであると考える。

 しかしながら、その他本件担当医等の所見等については、請求人もその詳細を把握しているとは限らず、当該所見等をありのまま請求人に開示することによる医学的影響等の詳細については審議会でも判断できないことから、現時点における「開示請求をした者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれ」の蓋然性について、本件担当医等を交え再度慎重に検討すべきである。

 イ 条例第13条第3号該当性の検討について

 条例第13条第3号は、「開示請求者以外の個人に関する個人情報・・・に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるとき(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるときを含む。)」と規定している。これは、開示請求のあった個人情報に開示請求者以外の個人に関する個人情報が含まれている場合には非開示とすることを定めたものである。

 これを踏まえ、審議会が本件個人情報を見分したところ、アで述べた情報のほか、平成19年7月23日、同年7月29日、同年7月31日、同年8月13日及び同年8月16日の記載には、請求人がその内容を知り得ないと思われる第三者の個人情報が含まれていることが認められた。

 既に説示したとおり、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされるべきであるが、その一方で審議会としては、第三者の個人情報がみだりに開示されることも看過できないことから、再度の決定を行うに当たっては、この点を十分に留意すべきと考える。

7 答申年月日

 平成21年10月27日(個審第126号)