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個人情報保護審議会諮問事件第34号

更新日:2015年1月30日 印刷ページ表示

1 件名

 「僕が〇〇電機の株主総会の事前質問書を本年6月に提出したがどのような相談を受けたか判る文書」の個人情報開示請求拒否決定に対する審査請求

2 諮問庁・処分庁

 公安委員会、警察本部長

3 開示等決定内容及び理由

(1)決定内容

 平成25年9月4日 個人情報開示請求拒否決定

(2)処分の理由

  • 条例第12条第1項「開示請求」の定義
    • 開示請求の対象となるのは「自己の個人情報」であるが、特定の相談事実に関する情報は相談者本人の個人情報であり、相談者本人以外の者が開示請求することは出来ない。また、こうした情報が相談者本人以外の者に開示されることになれば、警察と相談者との信頼関係が損なわれ、以後警察への相談を躊躇するなど、適正な相談業務の遂行に支障を来すこととなる。さらに、警察に相談したことに対する逆恨みや報復目的による犯罪行為を誘発・助長するおそれもあるため、仮に請求内容に合致する相談事実があったとしても、相談者本人以外の者に開示することはない。

4 不服申立て

(1)申立年月日

 平成25年9月8日

(2)趣旨

 本件処分の取消しを求める。

(3)理由

 請求しているのは〇〇電機と県警が僕についてどのように相談したのかを記録してある僕の個人情報である。

5 諮問年月日

 平成25年12月11日

6 審議会の判断

(1)結論

 群馬県警察本部長の決定は、妥当ではなく、これを取消して改めて決定を行うべきである。

(2)判断の理由

判断に当たっての基本的な考え方について

 条例は、第1条に規定されているとおり、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、県の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める権利を明らかにすることにより、県政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益の保護及び県民に信頼される公正で民主的な県政の推進を目的として制定されたものである。よって、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされなければならない。
 しかしながら、この自己情報の開示請求権も絶対無制限な権利ではなく、条例には他の法益との衡量により制限される場合も規定されている。

本件請求個人情報について

 本件開示請求の趣旨は、「僕が〇〇電機の株主総会の事前質問書を本年6月に提出したがどのような相談を受けたか判る文書」(以下「本件請求個人情報」という。)の開示を求めるものであり、請求人がいう相談とは、○○電機(企業名)が、株主総会の事前質問書に関して処分庁に相談した記録を指すものと解される。

条例の解釈について

ア 条例第12条第1項の「個人情報」について
 条例第12条第1項は、「何人も、実施機関に対し、公文書に記録されている自己の個人情報の開示の請求をすることができる」と定めている。この「個人情報」とは、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものをいう(条例第2条第1項)とされている。
 本件において、実施機関は「特定の相談事実に関する情報は相談者本人の個人情報であり、請求人が開示請求できる『自己の個人情報』に該当しないとして開示請求拒否処分を行った。一方、請求人は「請求しているのは〇〇電機と県警が僕についてどのように相談したのかを記録してある僕の個人情報」であるとして、本件処分を取り消し、開示を行うよう求めている。
 一般に、特定の相談事実に関する情報は、実施機関の主張するように相談者の個人情報であるが、その内容として、相談者以外の第三者を識別できる情報を含むのであれば、その部分に関しては当該第三者の個人情報である側面も併せ持つものといえ、これについて当該第三者が自己の個人情報として開示請求することは条例の解釈として認められなければならない。
 条例第12条第1項で開示請求の対象を「自己の個人情報」としているのは、自己情報コントロールの観点から、あくまで他者でなく自己の個人情報が請求の対象となる旨の確認的規定であり、複数者にとっての個人情報とみなせる特定の情報については、そのうちの一者について開示請求権を認めることが、その余の者についての開示請求権を排することにはならないと解されるべきである。
 この点、請求人が主張するような情報を「相談者の個人情報であるため、請求人はこれを自己の個人情報として開示請求できない」とした実施機関の判断は失当であり、原処分の取り消しを行うべきである。

イ 条例第15条の「個人情報存否応答拒否」について
 諮問庁は本件請求に係る個人情報を開示しないその余の理由として、「こうした情報が相談者本人以外の者に開示されることになれば、警察と相談者との信頼関係が損なわれ、以後警察への相談を躊躇するなど、適正な相談業務の遂行に支障を来すこととなる(条例第13条第7号該当)」、「警察に相談したことに対する逆恨みや報復目的による犯罪行為を誘発・助長するおそれもあるため、仮に請求内容に合致する相談事実があったとしても、相談者本人以外の者に開示することはない(条例第13条第5号該当)」として、非開示の妥当性を主張する。
 しかし、そもそも県民等が警察に対して相談することについては、相談の有無を含めてその秘密が守られるという前提で成り立っており、開示請求に係る個人情報に対応する相談が存在しているか否かを答えるだけで、非開示とすべき情報を開示することとなり、相談者の権利利益が侵害されるものと解されるから、条例第15条を適用し、当該個人情報の存否を明らかにしないで、本件請求を拒否すべきである。
 なお、当該拒否決定を行うにあたっては、請求のあった個人情報の存否を答えることにより、どのような非開示情報を開示することになるのかを具体的に提示する必要がある。

結論

 以上のことから、「(1) 審議会の結論」のとおり判断する。

7 答申年月日

 平成27年1月30日(個審第229号)

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