本文
個人情報保護審議会諮問事件第38号
1 件名
「平成25年8月1日の群馬県警本部110番通報のうち、請求者に係るもの及び同年同月同日の伊勢崎署員の出動状況のうち、請求者に係るもの」の個人情報部分開示決定に対する審査請求
2 諮問庁・処分庁
公安委員会、警察本部長
3 開示等決定内容及び理由
(1)決定内容
平成26年1月16日 個人情報部分開示決定
(2)非開示理由
- 「110番通報受理画面」及び「事件事故等取扱記録」中の、警部補以下の職にある職員の氏名及び印影
- 条例第13条第3号
開示することにより個人の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認めて実施機関が定める職にある職員の氏名であるため
- 条例第13条第3号
- 「事件事故等取扱記録」中の、出動件数欄に記載された休暇の種別及び事案欄の記載事項の一部
- 条例第13条第3号
開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報であるため(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報を含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため
- 条例第13条第3号
- 「事件事故等取扱記録」中の、駐在所員の勤務予定
- 条例第13条第5号
開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるため - 条例第13条第7号
開示することにより、警察業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため
- 条例第13条第5号
4 不服申立て
(1)申立年月日
平成26年2月25日
(2)趣旨
本件処分で非開示とした部分につき、他に存在すると思われる個人情報を追加して開示せよ。
(3)理由
群馬県個人情報保護条例第13条第3号イでは、慣行として知ることができるものは他人の個人情報であっても開示する旨定めてあるが、本件で実施機関が非開示とした「大家に関し警察において取得した個人情報」については、これに該当するため開示すべきである。なぜなら、大家はその後弁護士を立てて法的手段をとってきたが、これは自身の個人情報を明らかにしなければ出来ないことだからであり、また、借地借家法に様々な強行規定がある以上、この情報を隠蔽するのは違法である。
群馬県個人情報保護条例第13条第3号ロでは、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報は開示することとなっている。最初から請求人が請求した個人情報がすべて開示されておれば、大家の立てた弁護士との私訴や交渉が請求人に有利に出来たはずであり、つまり本件で実施機関は不服申立人に逸失利益を負わせたのである。
今回の請求で実施機関がしたことは、地方公務員法でいう職権濫用罪・怠業罪にあたる。したがって、開示請求に係る個人情報の特定で示した警察職員は処罰されるべきである。
5 諮問年月日
平成26年2月25日
6 審議会の判断
(1)結論
群馬県警察本部長の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。
(2)判断の理由
判断に当たっての基本的な考え方について
条例は、第1条に規定されているとおり、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、県の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める権利を明らかにすることにより、県政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益の保護及び県民に信頼される公正で民主的な県政の推進を目的として制定されたものであり、自己情報の開示請求に対する決定を行うに当たっては、原則開示の理念のもとに制度の解釈及び運用がなされなければならない。
しかしながら、この自己情報の開示請求権も絶対無制限な権利ではなく、条例第13条各号に規定された非開示情報に該当する場合には非開示となるものである。
開示すべき文書の特定について
諮問庁によれば、本件開示請求に合致する個人情報が記録された公文書は、開示請求書に記載された日付、請求者の氏名、居所等を条件に検索した結果、本件処分で特定した事件事故等取扱記録及び110番通報受理画面のほかには存在しないとのことであるが、この点、諮問庁の説明に特段不自然又は不合理な点は認められない。
従って、本件処分における実施機関による対象公文書の特定は、妥当であると認められる。
条例第13条第3号イ及びロ該当性について
諮問庁は、事件事故等取扱記録のうち、記載事項(事案5)の一部には、請求人がもめごとの相手方として申告した「大家」に関し、警察において取得した個人情報が記載されており、これを開示することにより、開示請求者以外の個人の権利利益を害すると認められることから、条例第13条第3号に該当し、非開示が妥当である旨、主張する。
これに対し、請求人は、大家はその後弁護士を立てて法的手段を取ってきたが、これは自身の個人情報を明らかにしなければ出来ないことであるから、実施機関が条例第13条第3号に該当するため非開示とした当該情報についても、同条同号イに定める「法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」に該当し、例外として開示すべきである旨、主張する。
この「慣行として」の解釈について、「群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用」では、「事実上の慣習としてという意味であり、慣習法として確立していることまで要しない。事実上の慣習といえるためには、偶然、同種の保有個人情報を本人が知ることができた例が存在したのみでは足りない。」としている
この点、当該情報について、請求人が主張するように、その後大家が法的手段を取ったため、請求人がたまたま知りうることになったとしても、本件開示請求の時点で事実上の慣習として請求人が知ることが出来、又は知ることが予定されている情報であったということは出来ず、条例第13条第3号イには該当しないというべきである。
また、審議会にて当該非開示部分を検分したところ、請求人の主張するような大家との訴訟における請求人に有利な主張の根拠となるものではなく、さらに請求人の権利は特別な法的保護に値するものとはいえず、条例第13条第3号ロにも該当しない。
従って、当該情報については、第第13条第3号柱書該当として、非開示が妥当である。
結論
以上のことから、「(1) 審議会の結論」のとおり判断する。
なお、請求人はその他種々主張するが、当審議会の判断を左右するものではない。
7 答申年月日
平成26年11月18日(個審第227号)