本文
個人情報保護審議会諮問事件第26号
1 件名
「平成○○年○○月○○日売買 建設省 登記代位者 建設省に係る○○の相続人全員の遺産分割証明書」の個人情報不存在決定に対する異議申立て
2 実施機関及び担当課室所
群馬県知事(沼田土木事務所)
3 開示等決定年月日及び内容
平成24年6月28日 個人情報不存在決定(以下「本件処分」という。)
4 不服申立て
(1)申立年月日
平成24年8月12日
(2)趣旨
本件処分の取消しを求める。
(3)理由
- 平成4年の遺産分割協議証明書は、平成16年に旧土木事務所に訪れた際に確認している。遺産分割協議証明書は全て筆跡の同じ文書であり開示できないため、不存在決定などという処分をしたものである。今回のように私が開示請求したところだけピンポイントで紛失することなどありえず不自然であり、紛失したのではなく隠ぺいしたことは明白である。正直につつみ隠さず提出されたい。
- 平成4年の遺産分割協議証明書は、私の長男が唯一立会し、違法な手続をした場面を一部始終監視していたもとで作成された文書であるため、証拠隠滅の疑いが濃厚である。証拠隠滅罪、個人情報保護法、地方公務員法等法令違反となる。沼田土木事務所への処罰及び沼田土木事務所の謝罪を求める。
5 諮問年月日
平成24年8月28日受理
6 審議会の判断
(1)結論
群馬県知事の決定は、群馬県個人情報保護条例の解釈及び運用を誤ったものではなく、妥当であると認められる。
(2)判断の理由
ア 判断に当たっての基本的な考え方について
条例は、第1条に規定されているとおり、個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、県の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める権利を明らかにすることにより、県政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益の保護及び県民に信頼される公正で民主的な県政の推進を目的として制定されたものであり、自己情報の開示請求の解釈・運用に当たっては、原則開示の理念のもとに解釈・運用されなければならない。
本件事案は、個人情報の不存在決定の当否が争われているものであるため、当審議会は、原則開示の理念に照らし、本件処分の当否について、条例の趣旨に従い、本件事案の内容に即して具体的に判断するものである。
イ 本件対象公文書について
本件異議申立てに係る対象公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、「国道120号 交通安全施設等整備工事のため、平成○○年○○月○○日付けで被相続人○○の相続人○○と沼田土木事務所長が土地売買に関する契約書を締結した際に作成された、県の保有する○○以外の相続人10名分の遺産分割協議証明書」である。
なお、遺産分割協議証明書とは、土地の登記記録の権利者が亡くなっている場合の所有権移転登記申請手続に使用され、具体的には、県が法務局へ嘱託登記申請をする際に添付書類として提出するものである。そのため、嘱託登記申請をする際に原本の還付請求の手続を行わなければ、嘱託登記申請をした県には戻ってこないこととなる。しかし、実施機関によれば、沼田土木事務所においては、嘱託登記申請をする際には慣例で原本の還付請求の手続を行っていた。
ウ 実施機関の対応について
実施機関によれば、直近の2年度分である平成23年度及び平成24年度の契約書綴り及び登記済証綴りについては、利根沼田県民局庁舎の5階にある沼田土木事務所の執務室(以下「5階執務室」という。)で保管し、昭和41年度から平成22年度までの契約書綴り、平成14年度から平成22年度までの登記済証綴り、相続関係書類の袋については、利根沼田県民局庁舎の5階の西側にある倉庫(以下「5階西倉庫」という。)で保管している。また、昭和45年度から平成13年度までの登記済証綴りについては、利根沼田県民局庁舎の4階の東側にある倉庫(以下「4階東倉庫」という。)で保管している。5階執務室で保管している2年分の契約書綴り及び登記済証綴りについては、そのうちの1年分を、毎年の文書の整理や廃棄(以下「文書整理」という。)を行う時期に、5階西倉庫へ移動させている。
実施機関は、開示請求された文書を開示するため、平成24年6月18日及び翌19日に用地係の職員2名により5階執務室、5階西倉庫及び4階東倉庫を捜索したが、本件対象公文書を見つけ出すことができなかった。続く同月20日には、用地係の別の職員が改めて捜索したが、見つけ出すことができなかった。さらに、同月21日には平成4年の契約時に在職していた当時の職員に対する聞き取りを行ったが、これによっても本件対象公文書の発見には至らなかった。
実施機関は、本件対象公文書の発見に至らなかった理由として、平成17年3月に旧沼田土木事務所(沼田市東原新町1906)から現在の利根沼田県民局庁舎(沼田市薄根町4412)への事務所の引っ越しを行っていることから、この引っ越しの際か毎年実施している沼田土木事務所の文書整理の際に、本件対象公文書を誤って廃棄した可能性が高いと説明している。
これらを踏まえ、平成24年6月28日、実施機関は本件開示請求に対し、本件対象公文書については実施機関において保有していないことを理由に、本件処分を行っている。
なお、実施機関は、申立人より平成4年の遺産分割協議証明書以外に、平成6年の遺産分割協議証明書及び昭和59年の遺産分割協議証明書の個人情報開示請求を受け付けているが、これらの2件については、本件処分と同日付けで個人情報開示決定を行っている。
エ 不存在決定の妥当性について
申立人が行った本件開示請求のうち、平成6年の遺産分割協議証明書及び昭和59年の遺産分割協議証明書に係る部分に対し、実施機関は、内容的には本件対象公文書と同種と考えられるこれらの文書について個人情報開示決定を行っている。このことから、当審議会としては、実施機関が本件対象公文書だけを故意に隠匿しているという心証は得られなかった。
そのため、当審議会は、平成17年3月に旧沼田土木事務所(沼田市東原新町1906)から現在の利根沼田県民局庁舎(沼田市薄根町4412)への引っ越しの際か毎年実施している沼田土木事務所の文書整理の際に本件対象公文書を誤って廃棄した可能性が高いという実施機関の説明に、特に不自然な点は見い出せなかった。
以上、実施機関による捜索の結果、他に行った決定の状況等から総合的に判断すると、本件対象公文書が存在すると認めるに足る事情はないため、不存在を理由とした実施機関の本件処分は、結果としてやむを得ない措置である。
オ 結論
以上のことから、「(1) 審議会の結論」のとおり判断する。
7 答申年月日
平成25年3月29日(個審第182号)