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令和2年度答申第3号

更新日:2020年7月28日 印刷ページ表示

件名

 差押処分についての審査請求

第1 審査会の結論

 本件審査請求には、理由がないので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により審査請求を棄却すべきである。

第2 審査関係人の主張の要旨

1 審査請求人

 審査請求人は、処分庁が行った令和2年○○月○○日付け差押処分(以下「本件処分」という。)について、処分庁が個人の事業税の課税処分を、遅いもので3年間も放置し、適切かつ速やかに課税処分を行わなかったということが処分庁の過失及び不作為であり、その過失及び不作為について何の説明もないまま行われた本件処分は不当であるため、その取消しを求める。

2 審査庁

 審理員意見書のとおり棄却すべきである。

第3 審理員意見書の要旨

1 本件先行処分の違法性について

  1. 先行処分である賦課決定処分の違法性が後行処分である差押処分に承継されるかについては、裁判例によれば、賦課処分と滞納処分とは全然別個の手続に属する行政処分であるとされ、また、賦課処分が当然無効であるか又は違法を理由として取り消されたときはこれに基づく滞納処分の違法も招来するが、賦課処分に存する違法が単に取消し得べき瑕疵に過ぎないときは取り消されない限りその賦課処分は依然として有効であるから、その賦課処分の違法を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないものとされている。
     また、行政処分が「無効」であることの要件については、最高裁判例によれば、行政処分が無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず、ここに重大かつ明白な瑕疵というのは、「処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合」を指すものと解すべきであり、瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきであるとされている。
  2. 処分庁が行った平成27年から平成29年分の事業の所得に係る個人の事業税(税額合計○○円)の平成31年4月10日付け賦課決定処分(以下「本件先行処分」という。)については、処分庁が、審査請求人は地方税法(昭和25年法律第226号。以下「法」という。)第72条の2第8項第4号に規定する「不動産貸付業」を行うものとして、その事業に係る所得を課税標準に税額を算定したものである。課税対象となる不動産貸付業の認定については、「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年4月1日総税都第16号。以下「取扱通知」という。)に規定がある。群馬県では、当該法令等の規定に則り不動産貸付業の認定を行っており、その上でなされた税額の算定において、違法又は不当な点はない。
     なお、この点については、審査請求人及び処分庁ともに争いはない。
  3. 法第17条の5第3項において、地方団体における賦課決定等の期間は、「法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日以後においては、することができない。」と規定されている。
    個人の事業税の法定納期限は、法第11条の4及び取扱通知第1章第4節13において、「納期を分けている地方税、例えば個人事業税にあっては、その第1期分の納期限をいうものであり」とされており、本件先行処分について見れば、最も時間が経過している平成27年所得に係るものであっても、その法定納期限は「平成28年8月31日」であり、法第17条の5第3項の「法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日」は、「令和元年9月1日」である。本件先行処分は、平成31年4月10日に行われたものであり、法第17条の5第3項に規定する期間を徒過していないことから、適法である。
  4. よって、課税要件の充足を認めてなされた本件先行処分については、違法又は不当な点はない。
  5. 以上のとおり、重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法又は不当な点もないことから、本件先行処分に関しては有効である。

2 本件処分について

  1. 上記1に記載したとおり、本件先行処分は有効に課税が成立しており、本件処分に対し何ら影響を与えるものではない。
  2. 本件処分は、審査請求人が督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに当該個人の事業税に係る徴収金を納付しなかったことから、処分庁が法第72条の68第1項第1号の規定に基づき行ったものである。
  3. 以上のとおり、本件処分に関して違法又は不当な点は認められない。

3 審査請求人のその他の主張について

(1) 審査請求人は審査請求書及び反論書において、処分庁職員の態度及び本件先行処分に関し、その過失及び不作為について説明が不足していることを理由に本件処分が不当であると主張している。
(2) しかし、上記(1)の審査請求人の主張する事実の有無は法の定めに基づく本件処分に対し、何ら影響を与えるものではない。

4 結論

 よって、本件処分には違法又は不当な点はなく、本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により棄却されるべきである。

第4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり、調査審議を行った。
令和2年5月29日 審査庁から諮問書及び諮問説明書を収受
令和2年6月5日 調査・審議
令和2年7月3日 調査・審議

第5 審査会の判断の理由

1  審理手続の適正について

 本件審査請求について、審理員による適正な審理手続が行われたものと認められる。

2  審査会の判断について

(1) 本件先行処分の違法性について

ア 審査請求人は、本件先行処分の瑕疵を理由に、本件処分の取消しを主張するものである。
イ 差押処分は、具体的に確定した税額の履行を求めることを目的とする滞納処分の一環としての手続きであるが、租税債務の確定を目的とする賦課処分との関係について、鳥取地方裁判所昭和26年2月28日判決(以下「鳥取地裁判決」という。)において「賦課処分と滞納処分とは全然別個の手続に属する行政処分であって両者の関係は同一手続中の各段階を構成する各行政処分(例えば農地買収手続における買収計画と買収処分)間の関係とは異なる」とされている。また、先行処分の違法性が後行処分に承継されることについては、先の鳥取地裁判決の上級審である広島高等裁判所昭和26年7月4日判決において、「滞納処分は賦課処分の有効なることを前提としてなされるべきものであるから、賦課処分が当然無効であるか又は違法を理由として取消されたときはこれに基く滞納処分の違法を招来するだろうけれども、賦課処分に存する違法が単に取消し得べき瑕疵に過ぎないときは取消されない限りその賦課処分は依然として有効であるからその賦課処分の違法を理由として滞納処分の取消を求めることはできない。」とされている。
ウ 行政処分が「無効」であることの要件については、最高裁判所第三小法廷昭和36年3月7日判決において、「行政処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならず、ここに重大かつ明白な瑕疵というのは、『処分の要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な瑕疵がある場合』を指すものと解すべきことは、当裁判所の判例である(略)。右判例の趣旨からすれば、瑕疵が明白であるというのは、処分成立の当初から、誤認であることが外形上、客観的に明白である場合を指すものと解すべきである。」とされている。
エ 本件先行処分については、処分庁が、審査請求人は法第72条の2第8項第4号に規定する「不動産貸付業」を行うものとして、その事業に係る所得を課税標準に税額を算定したものである。課税対象となる不動産貸付業の認定については、取扱通知に規定がある。群馬県では、当該法令等の規定に則り不動産貸付業の認定を行っており、その上でなされた税額の算定において、違法又は不当な点はない。
 なお、この点については、審査請求人及び処分庁ともに争いはない。
オ 審査請求人が審査請求書及び反論書においてその瑕疵を主張する「処分庁が個人の事業税の課税処分を、遅いもので3年間も放置し、適切かつ速やかに課税処分を行わなかった」ことについては、法第17条の5第3項において、地方団体における賦課決定等の期間は、「法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日以後においては、することができない。」と規定されている。
 個人の事業税の法定納期限は、法第11条の4及び取扱通知第1章第4節13において、「納期を分けている地方税、例えば個人事業税にあっては、その第1期分の納期限をいうものであり」とされており、本件先行処分について見れば、最も時間が経過している平成27年所得に係るものであっても、その法定納期限は「平成28年8月31日」であり、「法定納期限の翌日から起算して3年を経過した日」は、「令和元年9月1日」である。本件先行処分は、平成31年4月10日に行われたものであり、法第17条の5第3項に規定する期間を徒過していないことから、適法である。
カ 最高裁判所第一小法廷昭和49年9月2日判決(以下「最高裁昭和49年判決」という。)において、「納税義務の成立、内容は、もつぱら法律がこれを定めるものであつて、課税庁側と納税者側との間の合意又は納税者側の一方的行為によつて、これを動かすことはできないというべきである。」とされている。また、当該最高裁昭和49年判決を参照した東京地方裁判所平成26年7月18日判決では、「納税義務の内容や徴収の方法等については、専ら法律がこれを定めるものであるから、課税庁は、課税要件が充足されている限り、法律の根拠に基づくことなしに租税を減免したり、その徴収を猶予したりすることは許されず、仮に納税者との間で納税義務の内容や徴収の方法等について法律の定めるところとは異なる内容の和解ないし合意をしたとしても、上記に述べたところが左右されるものではないと解するのが相当である」と判示されている。
 この点について、本件先行処分について照らし合わせると、上記オに記載するとおり、本件先行処分は、課税要件の充足を認めてなされたものであり、違法又は不当な点も認められない。
キ 以上、上記アからカのとおり、重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法又は不当な点もないことから、本件先行処分に関しては有効である。

(2) 本件処分について

ア 上記(1)に記載したとおり、本件先行処分は有効に課税が成立しており、本件処分に対し何ら影響を与えるものではない。
イ また、法第72条の68第1項第1号は、個人の事業税に係る滞納者が督促を受け、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに当該個人の事業税に係る徴収金を完納しないときは、滞納者の財産を差し押さえなければならないと規定している。
ウ 本件についてみると、審査請求人は、本件先行処分に係る税額の納期限である令和元年○○月○○日までに納付せず滞納となっていたことから、処分庁は、同月○○日付けで、法第72条の66第1項の規定により審査請求人あて督促状を発付したことが認められる。
エ 本件処分は、審査請求人が督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに当該個人の事業税に係る徴収金を納付しなかったことから、令和2年○○月○○日に処分庁が法第72条の68第1項第1号の規定に基づき行ったものである。
オ よって、本件処分に関して違法又は不当な点は認められない。

(3) 審査請求人のその他の主張について

ア 審査請求人は審査請求書及び反論書において、処分庁職員の態度及び本件先行処分に関し、その過失及び不作為について説明が不足していることを理由に本件処分が不当であると主張している。
イ しかし、上記アの審査請求人の主張する事実の有無は、法の定めに基づく本件処分に対し、何ら影響を与えるものではない。

 以上のとおり、本件審査請求には理由がないから、「第1 審査会の結論」のとおり答申する。

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