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至仏山の保全対策
尾瀬ヶ原の西端に位置する至仏山は、学術的にも高い価値を有する高山植物の宝庫であり、日本百名山に数えられ、毎年多くの登山者が訪れています。
しかし、近年では、長年にわたる登山の影響のため、登山道周辺で植生荒廃や裸地化が進行し、極めて深刻な問題となっています。このため、群馬県ではこれまでさまざまな保全対策を講じてきました。
現在は、関係者で構成する至仏山保全対策会議(事務局:財団法人尾瀬保護財団)の一員として、「至仏山保全基本計画」(平成19年3月策定)に基づいた至仏山の保全対策を進めています。
至仏山保全対策事業の実施
平成19年に策定された「至仏山保全基本計画」に示された荒廃地の修復方針に基づき群馬県が管理する至仏山東面登山道において、登山道の保全、植生の保護や植生回復作業を実施しています。
【事業内容】
立入り防止柵の設置
7月から10月にかけての夏山シーズン中に登山道周辺の植生を保護するため立入り防止柵の設置を行っています。
登山道の維持補修
群馬県が設置した至仏山東面登山道の巡視を行い、木道・階段の補修、浮き石の除去、立入り防止柵の点検等を定期的に実施しています。
植生回復作業
群馬県が委嘱する尾瀬保護専門委員の指導のもと、標高1,800メートル付近に生じた大規模な荒廃地において植生を回復させるための作業を行っています。至仏山東面登山道の荒廃地では土壌がほとんど流出してしまったことから、播種や移植による植生復元が難しく、現在、土留工や植生ネットを設置し、植生基盤の整備を行っています。今後、原植生の詳細を調査し、現地の回復状況を見ながら播種や移植についての検討を進めていく予定です。
至仏山の使用ルールについて
至仏山の利用にあたっては、「至仏山保全基本計画」に基づき検討された適正利用のためのルールが設けられ、登山者の皆さまに至仏山の自然保護への協力をお願いしています。
1 残雪期(4月下旬から5月6日まで)の入山
ゴールデンウィーク前後の至仏山は天候によって雪山同様の環境になります。軽装や雪上登山の技術を持たない方の安易な入山は大変危険です。また、積雪等の状況により立入(滑走)可能区域が毎年異なりますのでご注意ください。
2 残雪期(5月7日から6月下旬まで)の登山道閉鎖
この時期は残雪等により登山道が不明確となり、周辺の植生に大きなダメージを与える可能性があるため登山道を閉鎖します。
3 山開き直後(登山道閉鎖解除から7月中旬)の入山
至仏山は場所によって7月中旬まで雪渓が残りますので登山ガイドとの入山をご検討ください。また、転滑落のおそれがありますので、雪上の歩行技術のない方は入山を控えてください。
4 東面登山道について
至仏山東面登山道(山の鼻から至仏山頂まで)は蛇紋岩といわれる滑りやすい岩石でできています。下りで利用する場合、急坂でもあり登山道脇の植生へ踏み込んでしまいやすく、植生荒廃の大きな原因となります。さらに登山行程の後半で体力的に疲れが出やすい状況にもなり、また、午後は天候も変わりやすく、雨になれば急傾斜地の蛇紋岩や木道が滑りやすくなるため大変危険です。
このような理由から、山の鼻から森林限界往復を除く東面登山道は「上り」専用とし、至仏山頂から山の鼻への「下り」は安全面、植生保護の観点から禁止とされています。
※その他利用にあたっての注意事項やルールの詳細については下記リンク(尾瀬保護財団<外部リンク>)からご確認ください。
<関連リンク>
尾瀬保護財団<外部リンク>
※資料ダウンロード から至仏山マナーマップをダウンロードできます。