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平成21年10月27日 前原国土交通大臣と1都5県知事との話し合い
(司会)
坂井課長(群馬県特定ダム対策課)
ただいまから、前原国土交通大臣と八ッ場ダム関係1都5県知事との話し合いを始めさせていただきます。本日の司会を務めさせていただきます、私は群馬県特定ダム対策課の坂井と申します。よろしくお願いいたします。
始めに、ご多忙のところをお越頂きました前原国土交通大臣から、八ッ場ダム建設についてのお考えについて、ご説明をお願いしたいと思います。
前原大臣、よろしくお願いいたします。
前原国土交通大臣
関東知事会の貴重な時間を頂きまして、こういった懇談の機会をいただきました、関東1都5県の知事の方にまずは心から御礼を申し上げます。ありがとうございます。また、ご説明に伺うのに上座に座らしてていただいて誠に申し訳なく思っております。
今日は私の他にご紹介をさせていただきますけれども、馬淵澄夫副大臣、三日月大造大臣政務官、共に参加をさせていただきます、よろしくお願い申し上げます。
まずは一言皆様方にお話をさせていただきたいのは、9月の21日だったと思いますが、大澤群馬県知事さんにお骨折りいただきまして、八ッ場ダムの視察をさせていただきました。首長さんとのお話し合いはさせていただきましたが、23日でした失礼いたしました9月23日。しかしながら、地元の方々との話というのは直接的にすることが出来ませんでした。
私はこの地元の方々には誠に申し訳けなく思っております。57年間ダムが造られるということから、反対運動が起きて、そして当初は村ぐるみで反対運動をされ、そして様々な経緯の中で苦渋の決断をされて今日に至っているということで、政策変更によって大きな苦しみとご迷惑をお掛けしていることに本当に申し訳なく私どもは思っております。したがいまして、何とか大澤知事さんにはご尽力をずっと賜って頂いている訳でありますが、まずは地元の皆様方とお話し合いをした後に1都5県の知事さんとお話しをしたいという思いを持って参りました。その結果、延び延びになって今日の段階に至ったことについて、まずは率直に皆様方にお詫びを申し上げたいというふうに思っております。
さて、我々政権交代で一つのことを皆さん方にお約束をして当選をさせていただきました。政権交代というのは、これは手段であって目的ではございません。何が目的かと、一つは税金の使い道を変えるということを我々はお約束を致しました。2004年をピークに日本の人口はどんどんどんどん減少しております。
そして皆さん方知事さんもお感じになっておられるように、ものすごいスピードで少子高齢化が進んでいる中で、これから社会保障、医療や介護や年金、こういうったものにお金が掛かることに、どうしてもこれは県、都県のみならず、我々国もなってくる訳でございます。また、国だけを見ましても長期債務というのは、国のGDPは1.8倍を超えているという状況でございまして、政権交代で我々は税金の使い道を変えて、コンクリートから人へということで税金の使い道を変えるということをお約束をさせていただきました。
また、一つの大きな問題点のポイントの一つといたしましては、単年度の予算が極めて国債発行に頼り過ぎているという、こんな異常な状態が長続きする訳ではございません。そういう諸々のことを政権交代を契機として事業のあり方を見直していくということで、一つの事業のあり方を見直しをさせていただいているのがこのダム事業でございます。
八ッ場ダム、そして熊本県の川辺川ダムにつきましては「中止」ということをマニフェストに掲げてさせて頂きました。
しかし、川辺川ダムや八ッ場ダムだけではございません。この2つのダムを含めて現在補助事業を含め143の事業、大型ダム事業というものが進行している訳でございますけれども、基本的にこのダム建設というものを根本的に見直していきたいということを今考えているところでございます。
大きく背景は2つございます。1つは出来るだけダムに頼らない治水、利水というものを考えていきたいということでございます。出来るだけダムに頼らない治水、利水というものは、どういったところから生まれてきているのかというとです。つまりはダムとか河川整備だけで全ての水、雨水、洪水、こういったものを押さえることが果たして出来るのだろうかというとで、従いまして我々としては山の保全、間伐材、間伐や除伐、そして山の保水能力というものをしっかり固める中で、自然の7割は山の森林であるこの日本の保水能力というものを、もう一度高める努力をしていかなくてはいけないということ。これを我々政権全体でやっていくということがまず1つでございます。
そして2つ目には、ダムを造れば水が貯まります、水だけではなく砂も貯まります。そのことによって水が汚れ、そして海に流れた特に水産資源への悪影響、これは川の部分でもそうでありますけれども、影響が及んでいる。そしてまた、砂が流れないことによりまして海に土砂が供給されなくて、そして海岸浸食などで、また、護岸工事などの新たな公共事業をやっていかなければいけないということ、つまりはダムによって砂を堰き止めることによって、新たな公共事業を生むことになったり、水質の汚染ということで貴重な水産資源等が失われることになってしまう。つまりは、山の保水能力を高めるところから川は海に流れる、全てのところまで大きく公共事業のあり方を見直すということ1つ我々はやっていただきたいと思っております。
もう1つは、これは八ッ場ダムにも関係する訳でもございますけれども、今までの河川整備の基本的な考え方について、これも基本的に見直しをしていきたいとこの様に考えている訳であります。
この利根川水系にいたしましても、例えば八斗島というところで、どのくらいの洪水のピーク流量が流れるかということで、基本高水というものを設定をしている訳でありますけれども、じゃ、計画高水と基本高水の関係、1/100、百年に一度、二百年に一度とこういった考え方で言いますならば、永遠にダムを造っていかなくてはいけないのではないかと、また2008年の防災、中央防災会議では、千年に一度の雨が降った場合にはどのくらいの洪水が起きるのかということで、1都6県では1万1千人の方が亡くなられたというような報告もある訳でございまして、我々はどこに基準を置いて河川整備をやっているのかということを根本的に見直していきたいと、このように思っている訳でございます。
いずれに致しましても、今日、昼間、記者会見をさせていただいた訳でございますけれども、その中身を知事の皆さま方にお話しを致しますと、我々がマニフェストで掲げましたこの八ッ場ダムの基本的な方針は堅持しつつも、単なる「中止」ではなくて、皆様方が懸念されている治水、利水ついて、再検証をしっかりとさせていただきたいと、このように思っております。
つまりは代替案としてどのようなものがあるか、そして皆様方が懸念されている事柄についてどのような代替案をお示しするのかということ、これを示さなければ皆さん方も出資をしていただいている訳でありますので、ご納得をいただけないというふうに思っておりますので、新たにこの再検証をさせていただいて、ダムによらない、出来るだけダムによらない治水のあり方、利水のあり方というものにご理解を得る、そういった照査にしていきたいと考えております。ただ、この再検証については予断をもって再検証をするものではありません。
つまりはダムありきでアリバイ作りのために再検証をする訳じゃなくて、徹底的な情報交換を行い、そして知事の皆さん方からも様々な観点からのご意見ご質問を伺う中での再検証をしっかりやって、そしてこの八ッ場ダムについての最終的な結論を得るということを是非、国として流域の皆さん方とご相談の中で結果として出させていただきたいと、このように考えているところでございます。
あんまり私が長くしゃべり過ぎると意見交換の時間が無くなりますので、私の方からは以上にさせていただきまして、意見交換をさせていただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。
前原国土交通大臣のご説明を受けて、都県知事からご意見、ご質問を承りたいと思います。
先ず、地元の知事である大澤群馬県知事からご発言をお願いいたします。
大澤群馬県知事
前原大臣におかれましては、昨日から国会開催という中で、今本当にお忙しい中を、今日は国交省の幹部の皆さんと共に群馬までお越いただきまして、大変ありがたく感謝を申し上げます。
私たち1都5県の知事は、今月の19日に八ッ場ダムに赴きました。現地視察をし、さらには地元の方々と意見交換をしました。その中で、共同声明として「八ッ場ダム中止撤回」を求めた声明を出して、大臣のほうにもお届けした訳であります。
我々は今の時点においても、ダムの中止撤回をしていただいて、しっかりと治水、利水の必要性について、公開の場で透明性のある議論をしていただきたいと思っております。
このダムの問題は、利根川水系全体を見て考えていただかなければならないわけであります。色々なご意見がある中で、ダムに頼らないかたちで、この問題を解決して行きたいと言われておる訳ですけれど、現実に、昭和56年と平成10年におきまして、群馬県は利根川で非常に大きな災害がおきまして、死者も出ております。このような中で、我々は本当にしっかりと検証していただかないとですね、なかなか群馬県の治水、利水は守れない訳でありまして、是非そうした点についてしっかりと検証していただきたいと、そんな思いでおります。
なお、長野原や吾妻の地元の方々はですね、やはり「大臣と真剣に話し合いがしたい」と、これは本当の、本音だと私は思っています。しかしながら、大臣はあまりにも早い段階でですね、「マニフェストにありき」、「中止だ」と、いうご発言をされたが故に、失礼ですけれど、地元の方々はかたくなになってしまったというのが現実であろうと思っております。
ぜひ、ダム総体を見直す中で、八ッ場ダムもその中に位置付けていただいてですね、八ッ場ダムの検証をしっかりとしていただきたいと思います。
これは平成10年に出た大水なんですけど、島津さん、よく民主党の方々が言われる島津さんの説だと13cmしか上がらないとのことですが、とんでもない話ですね。これは、車が70何台も流されて、死者が出るような事件であった訳です。だから大臣、しっかりとした検証をしていただいて、透明性のある答えを出していただければありがたいと思っています。
地元の方々は、57年となる長きに渡りまして翻弄されてきた訳であります。大臣も心配していただいておりますが、私はあまり長くこの問題を引きずることは、地元の方々の気持ちを考えた時、とても耐えられないと思っております。ぜひ、しっかりと生活再建は遅滞することなく進めていただいて、ダムの問題については、治水、利水の面でしっかりと検証していただき、地元の方々が本当に未来が描けるような政策をとっていただけるよう、心からお願い申し上げまして、私のお願いといたします。
ありがとうございました。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。続きまして、石原東京都知事にお願いしたいと思います。
石原東京都知事
今日はお忙しい所頂きまして、ありがとうございました。
あの、質問といいましょうか、意見の前にですね、念を押しておきたいんですけども、先程も記者会見についてのコメントをされましたが、この流域の治水・利水について徹底した検証をすると、言われたということは、つまり、始めに中止という決定ありきということではないんですね。その結果によっては、中止を中止するということもあり得るということですか。
前原国土交通大臣
ダムによらない治水・利水というものの流れの中で、代替案を示させて頂くということであります。ただ、今、石原知事がおっしゃったように、あるいは大澤知事がおっしゃったように、公開性・透明性を高めて、皆様方が納得して頂けるような議論を行う中で、アリバイ作りの再検証ではなくて、予断を持たずに再検証するということであります。
石原東京都知事
私はですね、この問題について、必ずしも玄人ではありませんがね、治水ということに関してよりも、むしろ利水というですね、日本のダイナモであります首都圏のですね、利水というものは経済活動に非常に影響があるわけでしてね、ごく最近平成8年にですね、この首都圏全体で、117日間の取水制限をした。例えば、ビール会社のようなものは営業を一部停止してですね、節水した。勿論学校のプールなんかも使えなくなった。これはね、やっぱり国民の生活に非常に大きな影響を与えたわけですけれども、そういったものもですね、きちっと検証して頂きたい。
それから、私はね、コンクリートから人へというのは非常に美しい理念だと思います。言葉として美しいと思います。それから、過去に自民党政権がやってきた公共事業には必ずしも私は賛成しなかったし、例えば諫早湾の干拓とか長良川河口堰なんて馬鹿げたことをね、一体何の根拠でやったかと、本当にあきれ果ててましたけども、これ八ッ場ダムはですね、現にですね、あれが存在しないために色んな弊害、治水・利水に関しても、起こっている訳ですね。で、話がちょっと違いますが、アレックカーという日本の公共事業に対して非常に批判的な学者が書いた『犬と鬼』という不思議な本がありますけど、それを見ますとね、日本の一年間のコンクリートの消費量というのはアメリカのなんと倍なんですよ。私それ見て驚いたんですが、しかしね、それだけで驚く、それをもってね、非とするというわけにはいかない。というのは、日本の国土はアメリカと違って、まったく狭小で且つ非常に急峻でね、可住面積が、日本より国土の少ないイギリスのですね、8分の1しかない。ドイツはね、日本の15倍です。可住面積といったら傾斜12度以下の数字です。それからフランスは、23倍ですな、それ故に至る所に山ばかりの非常にスチィープなね、その峻険な山ばかりのこの国土の中でね、私はやはり、治水・利水も含めて災害対策というのは、アメリカの必要以上にあると思いますが、そういった問題を含めてね、確かにその理念として、コンクリートから人へというのは非常に美しいし、ただね、これやっぱり、ひとつの言葉ですよ。行政というのは、言葉だけでは成り立たない。始めに言葉ありきということだったら、これはね、人間の信仰とか宗教と同じでありましてね、私たちは、多くの国民は、民主党の掲げたそういった理念に共感はしたでしょう。しかし、国民はそれを信仰したわけじゃありませんからね。これやっぱりね、弁えてこれからのことを考えて頂きたい。
それと、ついでに申し上げますとね、その八ッ場が遅れた理由はですね、遅れたことによって、どうもこの八ッ場っていう否定するという傾向があるけれども、これはもうお気付きになったかどうか知りませんが、あの八ッ場があるかつての中間選挙区の群馬の選挙区というのは、自民党の金城湯池でした。福田総理、いや中曽根総理、小渕総理を輩出したところでね、そこで何が行われたかという、このプロジェクトにそれ当然皆反対しますは、最初は誰でも。これを説得するために、このプロジェクトに関してはね、国土収用法っていうのは適用しなかった。意図的に。だから時間かかったんですよ。で、ごく最近になって着工されたということでね、時間が掛かりすぎて不要だというのはまったく成り立たないんですけれども、経過から見れば、その他申し上げたいことたくさんありますけどね、ダムはね、とにかく気象異常が続いてるこの世界の中で、特に不思議な気象状況にある日本の中で、どういう必要が生じてくるが、これは本当に人間では予測できない。例えば、東京のですね今絶対必要な小河内ダム、これ最大の水瓶ですけれども、これが出来たとき反対がありました。出来たときも、そんなもの造ってしょうがないじゃない、しょうがないというのを良く読むと小河内というんですな。小河内ダムというのは、小河内、しょうがないと読みますね。で、しょうがないダムだと言われたんですよ。ところがね、次の年にね、要するに非常に渇水状況になってね、あのダムがあったことで、非常に首都圏は助かった。そんなことを思い合わせますとね、私やっぱりこの問題はね、要するにこの異常な気象の様子について踏まえてね、人間に予測できない問答を行政がやるのは非常に難しいかもしれんけれども、慎重にですね、特にこの日本のダイナモであります首都圏の利水・治水っていうものを、過去に起こった事象というものをですね、踏まえながら正確に検証して頂きたい。それを重ねてお願い致します。ついでに申し上げますとね、もうひとつ思い出したのが、ダムに直接関係ありませんがね、あなた方がその時に、公開に出したか思うんだけれども、三木内閣の時にね、国鉄がですね、やっちゃいけないストをやるための、首都圏ストというのをやりました。それで、これを社会党が熱烈に応援したんだけれども、結局ね、10日間やるつもりが、番狂わせがあって、もう顰(ひん)蹙(しゆく)されて、5日間で終わった。その時に何が起こったかというと、彼らはですな、要するに、鉄道の要するにアクセス、鉄道のロジスティック運輸というものが止まればですね、物価に跳ね上がって大変なことになると思ったら、まったく影響がなかった。要するに東名高速が貫通しておりましてね、この間にトラック輸送にですね、切り替えることで、物価ってのはまったく余勢に影響しなかったんですね。聞くところ、つまり民主党の基本的なこの公共事業に対するプライオリティというのは、高速道路は無駄である、むしろですね、整備新幹線がプライオリティが高いということですけど、これはちょっと私は疑義を抱かざるを得ない。過去のですね、そういう事例を踏まえても、歴史というものはですね、ごく最近の事例で証明しているわけで、この問題もですね、慎重に考えて頂きたいと重ねて申し上げます。終わります。ありがとうございました。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。続きまして、上田埼玉県知事にお願いいたします。
上田埼玉県知事
先ず、今日は三役にお出でいただいたことに心から感謝をします。
私も、ムダな公共事業を止めるとか、できればダムによらない利水・治水というのは、基本的な方向として賛同するものです。
建設途上にあった戸倉ダムから撤退しました。これは建設中の国や旧公団の直轄ダムとしては日本で最初に中止した例なんですね。私からの呼びかけで、各県の知事さんのご理解を得て、戸倉ダムから撤退しました。それは八ッ場ダムと比較して、戸倉ダムの開発水量が絶対的に小さく、しかも、1トンの水を開発する単価は八ッ場ダムの3倍。ここは、一切水没地区がないという、つまり地元に犠牲を強いない、進捗率もまだ16%、そういう状況であったので、私はこの戸倉ダムから撤退を決めました。
その私が、八ッ場ダムは必要だということを一生懸命訴えています。都知事がいらしてますが、利水の面で少し追加をさせていただきます。
残念ながら、平成になってからも6回、埼玉県をはじめ首都圏は取水制限を行っております。一番大きかったのは平成8年の117日です。もし八ッ場ダムができていれば、ということを仮定すると、これが17日で済んだということにもなります。
現実に埼玉県は地下水を活用しておりました。豊富に水が出る所でしたので。ところが地盤沈下がはじまりましたので、法律や条例等でも地下水の利用を抑制し、かわりに河川を利用しています。それから毎日のように利根川から約240万トンの水を実は荒川に送っています。その荒川を通じて東京都の都民の人も水道水を飲んでいます。
そして、実は今年の9月は異常気象でした。9月としては、宇都宮市では、120年の観測の中で、前橋では、113年の観測の中で最少の雨量でした。そして埼玉県の熊谷も観測史上2番目の少ない雨量でした。
このように利水面で、日本の降雨量が、年度によっては、山谷ありますが、統計的には少なくなってきている傾向だけははっきりしています。一方では、ゲリラ豪雨が増えています。
こういう状況もあり、リスクを少しでもヘッジする必要がある。特に奥利根流域には5つのダムがありますが、吾妻川流域にはひとつもない状況です。
実はこの10年で、前原大臣はたぶんご存知ないと思いますが、利根川流域で28カ所も漏水がありました。
前原国土交通大臣
(上田さんの話を聞いて知っている、との発言あり)
上田埼玉県知事
(パネルを提示して)実は、これは土手の向こう側の田んぼなんです。河川の水位が高くなると、下の方から砂層を通って水が噴き出してこちらから漏水するんです。現実にこういうことが平成10年から28カ所もあるのです。
これが何故防げるかというと、大雨が降ると地元の水防団の皆さんが昼夜を問わずグルグル廻って、まだ漏水が少ない時点でくい止めるからです。そのうち水位が下がってきますから、漏水が無くなります。
常にそういう課題を抱えてますので、そういう部分でも吾妻流域で八ッ場ダムが完成すれば、少なくともその水位の上昇を抑えることができる、という効果があります。
そして、何よりも我々埼玉県がつらいところはですね、利根川の堤防の高さが標高約20mなんです。そして約13mのところに東北本線や東北新幹線や国道4号線や日光線があります。そして埼玉県の主要都市であります春日部市とか越谷市は約5mのところにあるんです。これが都県境の三郷や吉川になると、もう約2mになるんです。もちろん都内に入ったとたん0mです。したがって、ス-パ-堤防はじめ強化堤防の事業もやっていますが、遅々として進まないという現況があります。例えば堤防強化事業で、埼玉県内の利根川で約50kmの区間、深谷から栗橋まで、ここで1300億円の事業費を組んでいますが、まだ3%しか出来ていません。これは地方部ですからまだいいところです。これが都内近くになってくると、スーパー堤防事業になりますけど、僅か7kmで1340億円の事業費になります。幅300mぐらいのス-パ-堤防や200mぐらいのス-パ-堤防にすれば、仮に洪水が越流しても土手が壊れないから、工学的にはそういう土手が一番望ましいということは分かってるわけです。
しかし、費用がかかるうえに、おまけに街の中に来れば来るほど人家が増えます。そういう人達の移転補償を含めると、天文学的な数字になる。はっきり言って、ス-パ-堤防で、7kmで1340億円という数字を申し上げましたが、この掛け算だけで4兆4千億円になります。今人家のないところとか、一番簡単なところをやってるんです。もし、人家の多いところになってくると、たぶんこんな4兆4千億円なんかでは片付けられない。だから国土交通省も概算の数字も言いません。
そういう状況が現にあるという中でですね、少しでもリスクをヘッジするということを考えるのが、私は大臣の務めではないかと思います。マニフェストでお決めになった時に、今まで手紙もいただきましたが、どうもデメリット・メリットを検証されないままに、このことをお決めになったな、というような直感がしていたのです。今も「再検証する」とおっしゃっているが、今まで検証された中味があるんなら見せて欲しいのです。民主党内でどういう検討をされたのか、一度もお見せになったことはない。
私もマニフェストが出た瞬間、1兆3千億円の削減の中にこの八ッ場ダムが入っていたのは、それは間違いですよと、逆に国の支出は増えますよという手紙を、代表と幹事長と政調会長に出しました。さしたる返事はありませんでした。情緒的な話しかありませでした。
極めてですね、こういう大事な問題が、基本的には事業費を受けもつ我々に一切事前に相談も無いというのは遺憾です。実際ひとたび土手が破堤すれば、カスリーン台風当時でも1100人死んでるわけですから、当時の埼玉県の人口からするともう現在は4倍に膨らんでます。しかも、カスリ-ン台風級の洪水に耐えられるように、ということで国土交通省は我々に呼びかけてきました。その呼びかけたことについて反するような話をされるんであれば、事前に何らかの協議がなければ、国と我々の信頼関係なんていうものは、もう本当になくなってしまいます。我々が市町村に対してそんなことをすれば、県議会で解任決議が出ます。国会で出ないのが不思議なくらいです。そのくらい私は重く受け止めています。
ぜひ、どういう検証をされたのか、マニフェストに掲げる1兆3千億円減らす中にですね、何億、八ッ場ダムを止めたら減るのか。とにかくそういうことについてもですね、別途で結構でございますから、是非明らかにしていただきたいと思います。
今日は時間がありませんので一応最少限度申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。
続きまして、森田千葉県知事にお願いしたいと思います。
森田千葉県知事
前原大臣、副大臣そして政務官、ご多忙の中ありがとうございました。
前原大臣、本当に、党の中、そして政治的立場において、大変ご苦労なさって頑張ってるなと本当に強く思っております。
私、大臣の話をずっと聞いてて、ああ、1つ残念だなあ、これはね、どうなんだろうと。大臣が、地元の人と話合わないと。大臣ね、私、この間の八ッ場の視察の時に、地元の方々が「やり方が納得がいかない」と、そのようなことをおっしゃっておりました。ということは、中止ありきで来たから、自分達は中止のものに対して言う必要がないんじゃないか、言えないんじゃないかと、そういうところから来てるんですね。
私達もはっきり言って、急に中止と言われた時は度肝を抜かれました。どうしたらいいんだろうと思いました。ですから、もちろんこの事業においての徹底的な情報公開、再検証というのはもちろん必要でございますが、まずもってですね、私、そういう地元の人達のその57年のご苦労、それからですね、本当に、国策に沿った苦渋の決断をですね、もう一度、心の再検証というのもね、大臣、大事なんじゃないかな、私そう思いますよ。私、それをやるためにどうしたらいいのか、どうでしょうか。だから一度、中止ということをね、一度だけ棚上げにして、そしたら、私は地元の人達も出やすくなるんじゃないのかな、とそのように思うんでございます。
もちろん、300を超えた、信任を得た民主党さんでございます。私達、地方もですね、できる限りのことはですね、協力をしなければならないと思います。でも、本当に、先ほどのお話を聞いてみたならば、もう一度ですね、入口からやっていったとしても、決して私はですね、友愛の精神に背くことはないとそのように思います。
ありがとうございました。
(司会)
坂井課長
どうもありがとうございました。
続きまして、橋本茨城県知事さんにお願いいたしたいと思います。
橋本茨城県知事
今日は本当にご苦労さまでございます。
私、19日の時にお昼を食べながら、是非関東知事会に来ていただこうと言い出したものでしたから、実現できて本当にうれしく存じております。そして、本県の議会でも、昨日建設推進の意見書を議決いたしました。中止の意見書を共産党が出したのですけれども、推進も中止も、民主党はどちらにも賛成しませんでした。反対でありました。
そういう状況を見ましてもですね、私ども去年の3月頃には一生懸命基本計画の第3回の変更ということで、いかにこのダムが必要か、治水の面でも利水の面でも、これがなければこんなことになってしまいますよ、ということを相当この議会を通じて県民の皆様方にも説明してきたのです。それがいきなり、この中止ということになってしまった。これにつきましては、マニュフェストを基本的に守っていかなくては、というお話は分かりますけれども、この間の選挙でマニュフェストを、民主党を多くの方が支持しました。これについては、マニュフェスト丸ごとではなくてですね、トータルとして見て自民党より民主党の方がいいんだろうということで支持しているんだと思うのですよね。これですから、個別の政策をやっていくに当たっては、色々な方面から意見を聞いて検証していく必要があるのではないかなと思っております。そういった点でマニュフェストに書いてあるから絶対だという形で、結論ありきではない形で、この八ッ場をはじめとする各種の施策についてですね、色々ご検討をいただきたいと思っているところであります。
私も実は10年位前ですけども、緒川ダムという小さいダムをやめたことがございます。しかし、そういったことをやめるに当たっては、生活再建ももとよりですけども、色々なことを十分議論しなければならない訳でして、最初に結論ありきで始まっている訳ではないのであります。そして、先程来、埼玉の知事さんが詳細にご説明をさせていただいきましたけれども、我々も議論を19日にさせていただきました。そういうことをやっておりましてもですね、やはりゲリラ豪雨、あるいは干ばつ等がますます多発する中で本当に大丈夫なんだろうかと。先程、この、千年に一度ということまでやってたら際限がないという話もございました。そして、また、このダムに頼らない治水についての話もあった訳ですけども、森林を、あるいはまた、河川の堤防の造成をやっていく、そういったことだけではなくて、やはり流量を少しでも調節するという形で合わせ技でやっていくことも当然必要になってくるだろうと思いますし、また、ダムで水質が悪くなるという話がありましたけれども、その中の上の方でも下の方でも流せる様になっているので、ある程度水質が汚れるのが防げるようなダムの構造にもなってきております。色々なことを考えた上で、これから再検証されるということですから、是非お願いしたいと思っております。特に今、色々なところで先程の一番基本的な問題としては、経費はどちらがかかるのか、やめた方が高いのか、あるいは続けた方がかかるのか、という問題もありますけれども、色々な点で意見が分かれております。そういう中から地元の人達が、これは現地で聞かせていただきましたが、誹謗中傷を相当受けてる、ダムで、犠牲になった上に誹謗中傷を受けているというのは極めて気の毒なことであります。早く色々なことを検証して、ある程度結論を出して、それを色々各方面と相談して、そして最終的な決定をしていただきたいと思っております。
以上です。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。
続きまして、福田栃木県知事にお願いしたいと思います。
福田栃木県知事
まずこのような場を作っていただきまして御礼申し上げます。
「コンクリートから人へ」、この理念については私も賛同致します。
流域が違いますけれども、平成10年に那須水害がありまして、死者5名、行方不明者2名という状況で、甚大な被害を被っております。昨年10周年たちまして復興記念式典が行ったところでございますけれども、我々行政を預かる者は、安全・安心、人名優先、人命尊重、これは行政の大きな柱だというふうに思っております。そんな中にありまして、栃木県は2市1町、足利、佐野、藤岡町、この25平方キロの洪水氾濫区域の設定区域に入っておりますので、この分野で、治水の分野でダムに参画をしているところであります。
昭和22年がカスリーン台風でしたので、一昨年ですか、国土交通省主催の10周年の記念のシンポジウムがありまして、その時に私も初めて足利市の地獄絵図という昔の白黒のフィルムを見せてもらいましたけれども、そういうことが二度とあってはならないとうい立場からこの治水対策に参画をしているものでありまして、是非大臣の御挨拶の中で、検証した上で、代替案を示すということでございますので、一刻も早くその代替案を示してもらいたいというふうに思っております。
19日に1都5県で現地視察をして以降、私宛に、衆議院選挙は民意。大臣が中止と言ったことに対して知事が逆の立場をとることについてはいかがなものかという私宛の抗議が、メール或いは手紙で来ております。
ですので、一刻も早く代替案を示してもらって、そして我が県は治水の部分でございますので、洪水氾濫は起きない、100年に1度でも起きないんですよと、流域の皆さんは安心して生活をしてくださいと、こういう案を一刻も早く示していただかなければ我々も納得ができないということで考えておりますし、県議会ないしは県民に対する説明責任も果たせないと考えておりますので、先程の御挨拶のとおり一刻も早く治水・利水の代替案を示していただきたいとお願いする次第であります。
以上です。
(司会)
坂井課長
ありがとうございました。
ただ今の各知事さんの御意見に対し、前原国土交通大臣より意見等をいただきたいと思っております。
大臣よろしくお願いいたします。
前原国土交通大臣
では、すばらしい会議の場で各知事さんの貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
それぞれにお答えする時間がございませんので、幾つかポイントだけお話をさせていただきたいと思います。
先程、大澤知事やあるいは橋本知事からですねお話のありました現場地域住民への誹謗中傷ということについては、非常に私も怒りをもっております。
最も苦しんで来られた方々が、現地の方々でありですね、そういった方々が国の政権交代による政策変更で、私は被害者だというふうに思っておりますけども、そういった方々に対する誹謗中傷が来ている、あるいは、他の知事の所へもそういった御意見が来ているということについては、本当にそれは私は筋違いの話であろうと思っております。そういう意味では森田知事もおっしゃっていただきましたけれども、できるだけ早く地元の方々にお会いをして、お話をさせていただきたいと、このように思っている訳であります。
「コンクリートから人へ」という税金の使い道を変えるということについては御理解をいただいた、総論として、ただし、それぞれの都民、県民の命、財産、生活を守る立場として皆様方がおっしゃっることについて私は、なるほどと思って聞かせていただきました。
再検証の中で共に知恵を出し合いながらやっていかなくていけない事の1つは、私が1番始めに申し上げました、その所謂、基本高水といいますか、この利根川流域においては、八斗島というところで、毎秒、カスリーン台風の時が、2万2,000tの水が流れたといったところから基本高水が設定されている訳であります。そして、各知事さんがこれがあることによってそれが目的に達することが、近づくことができるということでありますけども、今の考え方に立ちますと、仮に八ッ場ダムができましても、この2万2,000tという、毎秒ですね、これについては到達し得ない訳でありまして、さらに何基かのダムを造らなければ、ダムだけになりますね。そういったことになる訳でありますし、勿論私も京都という所に住んでおりますし、淀川水系にあります。淀川水系の下流に行けば行くほど首都圏と同じように、大阪という大都市を抱えて、そして洪水が起きれば極めて甚大な被害が起きる地域を抱えていますので、皆様方が危惧されることがよく解る訳でありますけども、この100年に1度、200年に1度、或いは中央防災会議などの1000年に1度というものが出てきた時に、どうやってこの異常気象、先程上田知事もおっしゃった、あるいは橋本知事もおっしゃったゲリラ豪雨或いは干魃というものが両極端に来る中でこの治水を考えて行くのか、利水を考えて行くのかということは、今までの考え方でいいのかというのが私の大前提の大きな1つになっております。そして、カスリーン台風からこの利根川水系で申し上げれば、かなりのダムの整理ができ、また河川整備が行われて来ている訳でございまして、それを再評価にどう組み込むかのなかで、全体の治水・利水を考えて行くのかということ、そしてまた特に水についてはですね、私は制度的な見直しというものも必要ではないかという思いをもっている訳であります。
まあ余り風呂敷を広げ過ぎるといけませんけれども、しかしながら私はこの水利権という問題も含めてですね、やはり利水の問題については今のあり方というものを少し何か全体を見直す、というものがなければ、今の水利権というものが固まっているなかで利水というものを例えば実際に強いるということになってきた時には、おのずと答えが固まるというようなことになってしまうのではないかなと、そういうことも含めてですね福田知事から余り時間をかけずにということをおっしゃいました、確かにいつ大雨が降るかわからない、そして、都民、県民の方々の命、生活、財産を守られる知事の立場、また私大臣の立場も全く同じでございまして、
再検証というものを相談をさせていただきながら、しっかりとできるだけダムに頼らない案というものを作り上げていきたいと、このように考えております。是非御協力をよろしくお願い申し上げます。
石原東京都知事
こういう機会を持ってですね。都民、県民全国の国民にとって大変よかったと思います。やっぱり、行政というのは出来るだけ開かれたものであると思いますが、それと、もう一つ念を押させておきますけれど、各知事から申し上げたそれぞれの県の利水、治水の問題について、徹底した再検証をすると、それによって代案を出すと言われましたけれども、そこで、要するに出された代案について、私たちが意見を述べる機会があり得るですよね。
前原国土交通大臣
はい。
石原東京都知事
ありがとうございました。
上田埼玉県知事
ありがとうございました。なにか委員会みたいなものを作ってとのことですが、提灯持ちばかりの委員を集めてやられれば、もうその段階で結論が決まってしまいます。どちらかといえば、私は検証を十分されずに中止を決められたというふうに理解しておりますので、もう明日にでも今でも出してほしいんです。どのようなメリット、デメリットがあって、今回、中止となったのか。どのような検証をされたのか。そして、それはどういう専門家の人たちの意見を聞いたのか。そういうことも、プロセスとして、明らかにしてほしいと思っています。少なくとも我々には、一度も説明されてません。これも不思議な話で、当該自治体のメンバ-で、しかも共同の事業者で、巨額の負担をしてきた我々には、ちっとも民主党のマニフェストを作られる段階では、お話しされてません。私もぎょっとしましたので、お手紙を差し上げたんですが、さしたる返事はありませんでした。この部分は、前原大臣の責任ではないと私も思っていますけれども、結果的には、マニフェストに沿って中止と言われて、その後も大臣として、こういう各々とした理由でと一言も言っておられません。抽象的に言っておられるだけですから、科学的根拠や検討した形のことを全然言われてません。何となく、私から言わせると情緒の世界だなと理解しています。
大澤群馬県知事
現地の方々は、57年苦しんできたわけであります。このダムは現地の方は、誰も作って欲しくなかったダムであります。これは、国の国策として進められたダムであるということを本当に大臣には、しっかりと認識していただいてですね。このダムの問題に取り組んでいただきたいとの最後のお願いでございます。
前原国土交通大臣
個別の事柄について、議論をするということになると時間も掛かりますので。いや、あのですね。上田知事は同じ党に所属して、やっていた同士なんで分かっていただけると思いますけれど、科学的根拠というものは、基本的に国が出したものであります。我々は、政権交代の暁に、その国が今まで出してきた科学的根拠には依らない。それをもう一度、制度設計をし直して、そして、治水利水ついての対応策を考えると、こういうことでありますので、その上田知事がおっしゃる科学的根拠。テレビ等でお話しされてるケ-スを私よく見させていただいておりますけど、国土交通省河川局が作った資料を基にお話されてきていると思いますけれども、我々は、それを見直していきたい。こういう風に思っておりますので、また是非、議論させていただければありがたい。と、このように思っております。
大澤知事がおっしゃったことについては、重く受け止めて行かなければいけないと思っております。
上田埼玉県知事
いつまでに、少なくとも我々は来年度予算までに、何らかの形で出して頂かないと、色々な事業の組み立てもできない形になります。
前原国土交通大臣
また、進捗状況については、それぞれの知事さんにご説明をさせて頂きたいと思います。
森田千葉県知事
私ね、大臣と話すると、ああそうか、と良く分かるんですよ。そういう見方もあるのかな、こうだなと。でも大臣ね、やっぱりそういうことをまず聞いて下さいよ。聞いて政治的判断で最後に中止というなら分かるけれども、中止から入ってこられると、私たちもね、考える余裕もないしね、なんか感情論がまず先走しっちゃう時もあるんですよ。大臣、頼みますよ。