本文
利根川上流圏域河川整備計画
沼田市の河岸段丘
(出典:沼田市観光協会ホームページ)
本計画は、河川法第16条の2に基づき、利根川上流圏域の一級河川において今後20年間に行う整備の具体的な内容を、学識経験者、地域住民及び関係市町村長の意見を聞いた上で定めたものであり、令和3年2月に国の認可を受けた計画を掲載するものです。なお、適宣その内容について点検を行い、必要に応じて変更するものとします。
利根川上流圏域河川整備計画(令和3年2月26日認可)(PDFファイル:5.59MB)
目次
第1節 洪水による災害の発生防止又は軽減に関する事項
第2節 河川の利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
第3節 河川環境の整備と保全に関する事項
第1節 計画対象区間及び計画対象期間
第2節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
第4節 河川環境の整備と保全に関する事項
第5節 河川の維持に関する事項
第1節 河川工事の目的、種類及び施行場所並びに設置される河川管理施設の機能
第2節 河川の維持の目的、種類及び施行の場所
第5章 河川情報の提供、地域や関係機関との連携等に関する事項
第1節 河川情報の提供に関する事項
第2節 地域や関係機関との連携等に関する事項
第1章 圏域の概要
(1)河川の概要
利根川上流圏域は、利根川水源の群馬県利根郡みなかみ町の大水上山から、前橋市との境付近までの圏域であり、本圏域に関連する市町村は、沼田市、渋川市の一部、前橋市の一部、みなかみ町、吉岡町の一部、片品村の一部、川場村、昭和村、榛東村の一部の3市2町4村で構成されている。
本圏域内を流れる河川は、利根川及び支川の赤谷川、薄根川、片品川等61河川、流路延長約466キロメートル、流域面積約1,898平方キロメートルである。また本圏域内の湖沼は、赤城大沼、大尻沼等4湖沼である。
本圏域は、群馬県の中でも自然が豊かで、標高差が大きいという特徴がある。
本圏域の上流は森林が広がり、環境保全機能と木材の供給源として、大きな役割を担っている。また、利根川の水源地域として首都圏の人々の生活や産業を支えるため、国土交通省や水資源機構所管の数多くの治水・利水ダムが存在している。
水が豊富なうえ、勾配が急で、地勢的に高い落差がとりやすいなど、水力発電にとって極めて有利な自然環境条件にも恵まれているため、多くの発電ダムも存在している。
利根川と片品川の合流付近は、赤城山、子持山、武尊山等の火山や第三紀火山岩類の山地に囲まれた沼田盆地が形成されている。片品川の扇状地堆積物である沼田礫層が作った平坦面が広がり、利根川・片品川・薄根川の侵食により全国的にも特徴的な河岸段丘を形成している。
本圏域の下流は赤城山及び榛名山から広がる傾斜地と、そこから利根川に至る平坦地域から構成され、渋川市、吉岡町等は起伏が比較的大きい。
利根川源流域、湯檜曽川流域
利根川本川は、流域内の湧水、複数の沢等を集め、途中で赤谷川、薄根川、片品川と合流しながら、みなかみ町、沼田市、昭和村を流れ、山間部を流下し、渋川市、前橋市へと至る一級河川である。湯檜曽川合流点より上流域は、国土交通省管理の藤原ダム、水資源機構管理の矢木沢ダム、奈良俣ダムが運用されており、利根川流域全域の治水・利水を支えている。また、みなかみ町月夜野付近には霞堤が複数箇所設置されており、洪水調節や内水排除等の役割を果たしてきた。
湯檜曽川は、谷川連峰の朝日岳を源流とし、途中、国道291号と上越線に沿いながら流下し、湯檜曽において利根川と合流する流路延長約14.3キロメートルの一級河川である。この付近は日本有数の豪雪地帯であり、一ノ倉沢・幽ノ沢・芝倉沢等の急峻な沢を集める湯檜曽川は、通年、水量豊かで、きわめて清らかな流れとなっている。川の流れを活かし、ラフティング等のアクティビティーが盛んに行われている。
JR上越線水上駅付近では、同様に谷川連峰を源流とする谷川が右岸側より合流する。
赤谷川流域
赤谷川は、谷川連峰の水を集めながら、みなかみ町月夜野で利根川と合流する流路延長約24.7キロメートルの一級河川である。湯檜曽川と同様に急峻な地形が形成されており、滝や沢が多く流入する。猿ヶ京温泉付近では、国土交通省管理の相俣ダムが運用されており、ダム湖として赤谷湖が形成されている。月夜野で利根川に合流する手前には、黒岩渓谷とよばれる美しい渓谷が約1キロメートル続いている。近くを通る国道17号は、三国峠を経て、新潟県魚沼・長岡へと続く。
片品川流域
片品川は、利根川水系鬼怒川流域・阿賀野川水系只見川流域との分水嶺となっている黒岩山を源流とし、利根郡東部の山岳地帯の水を集めて沼田市内において利根川に注ぐ流路延長約53.8キロメートルの一級河川である。国土交通省管理の薗原ダムがあり、治水・利水・発電を目的に運用されている。また、上流には東京電力リニューアブルパワー株式会社管理の丸沼ダムがあり、バットレスダムという希少な型式から国指定重要文化財に指定されている。流域は、急峻な地形と脆弱な地質に覆われているため、国、県による砂防事業が多く行われている。
利根川流域(片品川合流以南)
山地における源流部から山地を抜ける渋川市に至る区間は、岩盤が露出した区間を川が流れている。徐々に勾配が緩くなってくると、両岸には岩盤が露出していても、河道内または湾曲部内岸に砂州が形成され、河原が見られる。
利根川は片品川が合流した後、群馬用水をはじめとする各種用水を満たしつつ南下を続け、渋川市で吾妻川と合流する。
(2)圏域の地形・地質
三国山地・帝釈山地・日光火山群・足尾山地等に囲まれた利根川源流部から渋川市に至る区間では、水上峡、諏訪峡に代表される巨石の点在する渓谷が連続する。渋川市以南には、赤城山及び榛名山から広がる傾斜地と、そこから利根川に至る平坦地域から構成され、渋川市、吉岡町等は起伏が比較的大きい。
沼田盆地では、赤城火山と子持火山の堰止めによる古沼田湖が消失する過程において、多段の河岸段丘が形成されたと考えられている。沼田盆地の地質は、沼田湖成層、沼田礫層から成り、その上部を数メートルの関東ロームが覆っている。また、段丘面では、砂礫層・関東ローム層が発達している。高位段丘では5~8メートル、中位段丘では3~4メートル、下位段丘では1.5~2.0メートルの関東ロームが堆積している。
(3)圏域の気候
利根川上流圏域の気候は内陸型気候と日本海側気候の境界域となっている。このため、日本海側気候の影響を強く受けるみなかみ町に代表される山岳地域では、冬季には積雪深が3メートル(アメダス藤原地点)に達することもある。片品村は、関東地方で唯一、特別豪雪地帯の指定を受けている。年間平均降水量は沼田市で1,143ミリメートル、みなかみ町で1,773ミリメートルであり、全国平均の約1,600ミリメートルと比較して降水量が少ない地域と多い地域を併せ持っている。月毎の降水量は、沼田市では梅雨時期と台風通過時期である6月~9月に多く、冬季の降水量は少ない。一方、みなかみ町藤原では同様に6月~9月に多く、更に12月~1月に降水量(降雪量)のピークを記録する。
本圏域の年間平均気温は11度前後で、夏季と冬季の気温差が大きい。
(4)圏域の歴史
利根川上流圏域は、縄文時代の遺跡が多く発見されている。敷石住居を有する水上石器時代住居跡(みなかみ町)、集落、水場、祭祀を有する矢瀬遺跡(同)、配石遺構や住居跡、石製品が発見された滝沢石器時代遺跡(渋川市)は、いずれも国史跡に指定されている。古墳時代には、薄根川上・中流域に多くの群集墳が築かれた。古代には、律令国家により開発が促進され集落数が増加した。その後、一時集落数が減少し、天仁元年(1108)の浅間山噴火被害もあったが、中世には荘園開発の動きが活発になった。
戦国時代になると、越後や信濃にとっての関東の玄関口として、小沢城、名胡桃城等の数多くの城が築かれ、天文元年(1532)頃には沼田氏により沼田城が築かれたと言われ、近世になり真田氏、本多氏、黒田氏、土岐氏が歴代にわたって居城し、街は城下町として整備された。また、城下町としてだけでなく川場・片品・奥利根の農村を背景とする市場や三国街道の宿場町として発展した。寛永5年(1628)、真田氏により薄根川から用水路が新設され、城下の人々の飲料水や灌漑用として水不足を解消し、現在でも地域にとって重要な用水路となっている。
大正13年(1924)には上越線が開通し、沼田町(現沼田市)を中心とした地域の発展が促進された。
戦後、昭和22年(1947)に利根川流域に大きな被害を及ぼしたカスリーン台風を受け、本圏域内に複数の多目的ダムが計画・竣工された。これらのダムは、現在も洪水調節だけでなく、利根川流域の農業用水や上水道水、電源開発等に大きく寄与している。
(5)圏域の自然環境
利根川上流圏域は、三国山地・帝釈山地・日光火山群・足尾山地等に囲まれ、中心部に武尊山、赤城山、子持山等の山々が位置している。また、ラムサール条約湿地に登録されている尾瀬国立公園のほか、日光国立公園、県立赤城公園等、県内でも特に多くの動植物が生息・生育する貴重な自然環境を有する地域を含んでいる。本圏域内では、国の特別天然記念物に指定されているニホンカモシカ等の重要種が確認されているほか、「薄根の大クワ」等の国指定の天然記念物や、「みなかみ町・大峰山モリアオガエル繁殖地」、「ユビソヤナギ群落」、「入須川のヒカリゴケ自生地」、「武尊牧場レンゲツツジ群落」等の県指定の天然記念物が数多く存在している。
こうした良好な自然環境を有する本圏域では、国により利根川源流部が自然環境保全地域に、また、県により大峰沼等が自然環境保全地域に指定されている。
また、野生鳥獣の保護を図るため、尾瀬国立公園、日光国立公園、赤城山等が県により鳥獣保護区に指定されている。
(6)圏域の社会環境
利根川上流圏域の前橋市を除く関連市町村の人口は、約19万人で、県全体の約10%を占めている。渋川市の人口が最も多く、次いで沼田市、吉岡町、みなかみ町、榛東村、昭和村、片品村、川場村と続いている。平成25年から平成29年において、全域の人口は吉岡町を除いて減少傾向である。
産業構成としては、前橋市を除くと、全域で第三次産業の比率が高くなっている。沼田市、渋川市、吉岡町、榛東村、川場村、昭和村では卸売業・小売業の比率が高い。一方、みなかみ町、片品村では宿泊業・飲食サービス業の比率が高い。
土地利用状況は、山地が全体の約80%と大部分を占めており、宅地が約3%、農地が約10%を占めている。
本圏域には、関越自動車道、上越新幹線、JR上越線、国道17号、国道120号、国道291号等の都市基盤が整備されている。
第2章 河川の現況と課題
第1節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
利根川上流圏域における過去の大きな水害は、昭和22年、昭和23年、昭和24年、昭和34年、昭和41年、平成3年、平成13年、平成22年、平成26年に発生し、その中でも昭和22年のカスリーン台風では本圏域だけでなく、群馬県全域で大洪水や河川の氾濫、堤防・道路・橋梁の流失や決壊が発生、また山間部や丘陵地帯では、山津波(土石流)が発生した。特に、赤城山南麓では大規模な崩壊がおこり、利根川支流の沼尾川等の中小河川から流下した山津波(土石流)が山林、田畑、家屋等を急襲し、未曾有の大災害をもたらした。カスリーン台風による被害を契機として、国、県により沼尾川流域に多くの砂防施設が建設された。
近年では、平成3年の台風14号、平成13年の豪雨、平成22年の梅雨前線豪雨、平成26年の異常気象、平成27年の豪雨においては、宅地浸水被害が発生している。
利根川上流圏域における治水事業として、平沢川は、昭和44年に小規模河川改修事業として改修に着手し、昭和54年に改修をほぼ完了している。栗の木川は、昭和61年に広域一般事業として改修に着手し、平成13年に改修をほぼ完了している。赤谷川の支川である須川川は、昭和61年に広域一般事業として改修に着手し、上流部の一部区間を残して、平成11年に改修をほぼ完了している。
河川改修の進捗に伴って、大きな洪水被害は減少してきたが、四釜川の未改修区間においては小規模ながら氾濫が発生している。
なお、河川改修にあたっては、動植物の生息・生育や自然環境に配慮した多自然川づくりが進められている。
本圏域では、洪水被害軽減のために圏域全体を見据えた治水対策が必要である。また、これまで整備してきた治水施設の機能を長期かつ確実に発揮するよう必要に応じて対策を行う。
第2節 河川の利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
利根川上流圏域における河川の水利用は主に発電用水と農業用水である。発電用水は、利根川上流ダム群や本支川の堰より取水されている。農業用水は、群馬用水はじめ複数箇所で取水され、灌漑に利用されている。水道用水は、群馬用水により県央地域の前橋市、高崎市、渋川市等8市町村に供給するため、最大3.41立方メートル毎秒を取水している他、渋川市、沼田市が水源として利用している。
利根川全体では、近年の渇水の状況として、昭和47年から平成30年の47年間に16回の渇水が発生している。渇水時の取水制限は2か月以上の長期にわたることもあり、社会生活、経済活動等に大きな影響を与えた。中でも、昭和62年、平成6年及び平成8年の渇水では、取水制限が最大30%に至っている。平成8年渇水では、少雨の影響により、利根川では冬期、夏期の2度の渇水に見舞われ、冬期では最大10%の取水制限が76日間(一時緩和期間を含む)、夏期では最大30%の取水制限(30%の取水制限期間は6日間)となり、県内でも群馬用水が取水制限を受けるなど、1都5県で一時断水や受水企業の操業時間の短縮等の影響が生じた。
また、農業用水は番水等水管理に要する労力、費用の増加や作物の植え付けが出来ない等の事態が生じた。近年では、平成28年に記録的な小雨、5月の降水量が観測史上6番目に少なかった影響により、取水制限は79日間(取水制限は10%)と最長の期間となった。
なお、水利用にかかる堰等の施設が多数あることから、その機能を適切に維持していくことも重要な課題となっている。
農業用水 | 水道用水 | 工業用水 | 発電用水 | その他 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
取水量(立方メートル毎秒) | 71.13立方メートル毎秒 | 4.97立方メートル毎秒 | 1.77立方メートル毎秒 | 1,418.63立方メートル毎秒 | 1.74立方メートル毎秒 | 1,498.24立方メートル毎秒 |
割合 | 4.8% | 0.3% | 0.1% | 94.7% | 0.1% | 100% |
第3節 河川環境の整備と保全に関する事項
(1)自然環境
利根川上流圏域は、群馬県の中でも自然が豊かで、標高差が大きいという特徴がある。良好な自然環境を有した本圏域では、河川についても、国や県の絶滅危惧種が見られるなど、動植物の生息・生育・繁殖場所として貴重な場となっている。動植物の生息・生育・繁殖には、多種多様な自然環境が必要であるため、動植物の生息・生育・繁殖に配慮した河川環境の整備と保全が必要である。
1)植生
本圏域内では、標高500~600メートル付近を境として常緑広葉樹林域から落葉広葉樹林域に移行し、標高1,600~1,700メートル以上で亜高山針葉樹林域となる。
亜高山針葉樹林域には自然植生が広く残されている。多雪地の黒岩山以北や武尊山にはオオシラビソ林が分布するが、黒岩山以南ではシラビソ-オオシラビソ林に移行する。より多雪の奥利根地域や谷川岳周辺では、ミヤマナラ低木林やチシマザサ草原となっている。
落葉広葉樹林域では、奥利根地域や谷川岳、武尊山周辺に、多雪地の自然植生であるチシマザサ-ブナ林が広く残されている。広い面積を占めるミズナラ林の多くは二次林である。また、カラマツやスギの植林地も広く分布している。平坦な川の中州や川岸にはシロヤナギ等のヤナギ林が発達し、湯檜曽川沿いにはユビソヤナギ林がみられる。片品川の河原等には、コゴメヤナギ林やネコヤナギ低木林、ツルヨシ群落が分布している。
常緑広葉樹林域となる沼田盆地より低標高地では、クリ-コナラ林やクヌギ-コナラ林等の二次林、スギ等の植林地、耕作地となっている。沼田から前橋に至る段丘崖にはケヤキ林が多く生育している。利根川等の河原では、洪水毎にできる新しい裸地に、ネコヤナギ低木林やツルヨシ群落がみられ、砂礫上にはカワラメドハギ-カワラケツメイ群落等が分布している。また、中州には逸出したニセアカシア林がみられる。
2)魚類等
本圏域内ではこれまでにイワナ、ヤマメ、ウグイ、アブラハヤ、ヒガシシマドジョウ等32種の魚類が確認されている。希少種としては、ドジョウ、カマツカ、カジカ等18種が確認されている。
なお、本圏域内には、在来種への影響が懸念される外来種のコクチバスも確認され、奥利根湖では漁協による駆除が進められている。
また、魚類以外では、カワニナ、モノアラガイ、シジミ、ヌマエビ、テナガエビ、サワガニ等が、本圏域内で確認されている。
3)鳥類
本圏域内では、群馬県の絶滅危惧1(※注)A類に評価されるイヌワシ、ブッポウソウが確認されている。また、絶滅危惧1(※注)B類に評価される種はサシバ、クマタカ等8種、絶滅危惧2(※注)類に評価される種はミゾゴイ、アオバズク等4種、準絶滅危惧に評価される種はハチクマ、オオタカ等9種が確認されている。このうち、イヌワシは国の天然記念物に指定されている。また、魚食性のカワウが、平成以降確認され、魚類等の生息領域を脅かしている。
(※注)本文ではローマ数字表記
4)両生類、爬虫類、哺乳類
本圏域内の両生類は、群馬県の絶滅危惧2(※注)類に評価される種としてトウホクサンショウウオ、ニホンアカガエル等5種が確認されている。また、準絶滅危惧に評価されるクロサンショウウオ、モリアオガエルが確認されている。このうち、トウホクサンショウウオは県の天然記念物に指定されている。
爬虫類は、群馬県の準絶滅危惧に評価されるタカチホヘビ、シロマダラが確認されている。
哺乳類は、群馬県の絶滅危惧1(※注)A類に評価されるアズミトガリネズミ、コヤマコウモリ、コテングコウモリが確認されている。また、絶滅危惧2(※注)類に評価されるカヤネズミ、準絶滅危惧に評価される種としてはモモンガ、ヤマネ、カワネズミ等9種が確認されている。このうち、ヤマネは国の天然記念物に指定されている。また、本圏域では国の特別天然記念物に指定されているカモシカが確認されている。
(※注)本文ではローマ数字表記
5)昆虫類
本圏域内では、絶滅危惧1(※注)類に評価される種はオオイチモンジ、ヒメギフチョウ、ハッチョウトンボ、ゲンゴロウ等18種が確認されている。特にゲンゴロウは、特定県内希少野生動植物種に指定されている種である。絶滅危惧2(※注)類に評価される種はモートンイトトンボ、ハルゼミ等25種、準絶滅危惧に評価される種はベニヒカゲ、ミネトワカワゲラ、カワラバッタ等62種が確認されている。このうち、オオイチモンジ、ヒメギフチョウ、ベニヒカゲは県の天然記念物に指定されている。また、オオウラギンヒョウモンについては過去に生息が確認されていたが、現在は絶滅したと評価されている。本圏域内の河川およびその周辺は、希少な昆虫類が多く生息する環境を有している。
(※注)本文ではローマ数字表記
このような本圏域内の河川や湖沼における多様な動植物の生息・生育・繁殖場所を適切に保全していくため、過去の河川改修による水際植生の喪失や画一的で単調な平瀬化や堰による魚類の遡上障害等の改善が重要な課題となっている。
加えて、本圏域では、河川の植生調査が不足しており、水辺に生息・生育・繁殖する動植物を適切に保全していくため、河川の植生調査の実施が課題である。
また、在来種への影響が懸念される外来種も確認されており、外来種への対策の必要性も高まっている。
(2)水質
河川の水質については、環境、利水状況に応じて類型指定し、その類型ごとに環境基準が定められている。利根川上流圏域の河川では、利根川(広瀬橋、月夜野橋、大正橋)、片品川(二恵橋、桐の木橋)、赤谷川(小袖橋)の3河川に環境基準点がある。生物化学的酸素要求量(BOD)(75%値)に着目すると、利根川(月夜野橋、大正橋)はA類型(BOD値2ミリグラム毎リットル以下)、その他はAA類型(BOD値1ミリグラム毎リットル以下)に指定されている。
平成21年度から平成30年度の公共用水域水質測定結果では、すべての地点でBOD測定値は基準以下となっている。
本圏域の湖沼(一級河川以外も含む)では、赤城大沼、奥利根湖、ならまた湖、藤原湖、赤谷湖、薗原湖、洞元湖の7地点に環境基準点がある。化学的酸素要求量(COD)(75%値)に着目すると、7地点すべてA類型(COD値3ミリグラム毎リットル以下)に指定されている。
平成30年度公共用水域水質測定結果では、赤城大沼で基準値を上回る値となっている。平成21年度から平成29年度の水質測定結果をみても、赤城大沼では経年的に化学的酸素要求量が基準値を上回る値となっていることから、今後も水質の変化について測定・把握をしていく必要がある。
(3)河川利用
利根川上流圏域では、尾瀬国立公園、県立森林公園21世紀の森等の施設が整備され、イベント、レクリエーション等、人々の憩いの場として広く利用されている。みなかみ町では、利根川の一部区間でラフティングツアーが実施されており、観光客に人気のイベントとなっている。
また同町では、平成31年3月に利根川が群馬県管理河川としては初めて、国土交通省により「かわまちづくり」に登録され、町、民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の下、利根川河川敷の清流公園を中心とした「河川空間」と、道の駅みなかみ水紀行館(みずきこうかん)を中心とした「まち空間」が融合した良好な空間形成を目指して、整備を行っていく予定であり、「河川空間のオープン化」を図ることで地域の魅力向上を目指し、観光振興の促進に努めていく。
なお、当該地域では河川への市民の関心も高く、多くの市民団体が河川美化、水質保全等を目的とした活動を行っている。
治水対策として河川整備を行った赤谷川については、親水性に配慮した整備も行っており、一部は公園利用されるなど、地域の憩いの場となっている。また桜川は、国土交通省が認定している「水辺の楽校」にも登録されており、河畔林等の自然環境を保全しつつ、置き石、遊歩道、河川プール等、親水性に配慮した整備が行われ、子供が身近に河川と触れあえる場となっている。
また、アユ、ヤマメ、イワナ、コイ、ウグイ、ウナギ、ワカサギ等を対象魚種とした漁業権が漁業協同組合に免許され、釣りを中心に利用されている。
(4)景観
本圏域内には、利根川本川をはじめ、支川赤谷川、片品川に渓谷が多く存在し、良好な自然環境が形成されているとともに、多くの人々が訪れる観光名所となっている。このうち、吹割の滝は、高さ7メートル、幅30メートル余りにも及び、東洋のナイアガラといわれている。
また、沼田市の片品川沿い(利根川と合流する前の下流域)では、段丘崖が深くはっきりとした河岸段丘が発達している。
本圏域内の片品村、みなかみ町、川場村、昭和村は、景観法に基づいて良好な景観形成のための具体的な施策を実施していく「景観行政団体」へ移行し、良好な景観形成に取り組んでいる。中でも、みなかみ町では、谷川岳を中心とした山並み、大水上山を水源地とする利根川の清流、三国街道の宿場町としての街並み等、地域の特性を活かした独自の景観形成に取り組むため、平成30年10月20日に景観行政団体へ移行し、景観条例および景観計画が施行されている。
第3章 河川整備計画の目標に関する事項
第1節 計画対象区間及び計画対象期間
計画対象区間は、利根川上流圏域において、県が管理する一級河川全てとする。
計画対象期間は、利根川上流圏域内の一連の河川事業の完成によって効果が期待できる今後おおむね20年間とする。
第2節 洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
利根川上流圏域の河川においては、沿川の人口・資産の状況、現況の流下能力、河道形態、災害の発生状況等や群馬県の他河川とのバランスを考慮して、目標とする治水安全度を設定することとする。
利根川の本計画対象区間は、人口・資産が集中する渋川市、前橋市等を流下する主要河川であることから、下流の利根川中流圏域河川整備計画と整合を図り、大正橋地点で6,000立方メートル毎秒の洪水による家屋の浸水被害を解消させることを目標とし、また午王頭川、赤谷川においては、概ね10年に1回程度発生する規模の洪水による家屋の浸水被害を解消させることを目標として河川整備を実施する。
本圏域内で発生する内水による家屋の浸水については、関係する市町村と連携を図って被害の軽減に努める。
本圏域内で発生する土砂災害については、県砂防部局や森林部局との連携を図り、被害の未然防止や軽減に努める。
これまで整備してきた治水施設の調査及び点検結果に応じて、必要な対策を実施することにより、その機能の向上を目指すとともに、適切な時期に適切な整備を実施することにより、長期にわたり施設の有効活用を図る。
なお、社会状況、災害の発生状況等に応じて、おおむね10年ごとに河川整備計画の見直しを行うこととする。
第3節 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項
河川は、地域の方々の身近な憩いや安らぎの空間としての役割を果たしており、中でも広大なオープンスペースである高水敷は、市町村の都市公園や運動公園としてのニーズも大きい。一方で、高水敷は洪水を安全に流下させるために必要な区域であることから、増水時における利用者の安全確保や、流下阻害となるおそれのある工作物の移動のほか、水位低下後の速やかな復旧・機能回復等、占用者の管理体制を確認した上で、占用許可(更新を含む)を行うこととし、これを通じて適正な河川利用を図る。
また、河川水の利用に関しては、利根川・赤谷川・片品川等から各種用水が安定供給されているが、今後とも上流ダムからの補給、水資源の合理的な利用促進を図り、現況の流量が流域内に安定的に確保できるように努める。
なお、流量の安定的な確保にあたっては、取水量・系統の把握および河川流量観測を継続的に実施し、河川の流量把握を十分行う。
第4節 河川環境の整備と保全に関する事項
水質が良好な河川や河畔林の多い河川等、自然が豊かで多くの動植物が生息・生育・繁殖している地域については、自然環境を保全し、自然を活かした水辺環境の整備を行う。
河岸保全のためコンクリートによる護岸整備を行う場合でも、瀬や淵の保全や川の流れを固定化しないようにするなど河川の自然の営みを取り入れた川づくりの考え方により、動植物が生息・生育・繁殖できるような水辺環境の整備に努める。
市街地を流れる河川や近傍に公園等の人々が集まる施設がある河川では、地域の方々の意見をふまえ、気軽に人々が川に親しむことのできる水辺空間の整備を行うとともに、生態系に配慮し、動植物の生息・生育・繁殖に適した環境の保全・整備に努める。
上記の整備にあたっては、治水、利水及び流域の自然環境、社会環境との調和を図りながら、自然環境の保全と秩序ある利用の促進を目指す。
自然環境の保全・回復については、本圏域の動植物が生息・生育・繁殖している水辺を可能な限り保全・回復する多自然川づくりを行う。
水質については、地域住民や関係機関等と連携を図り、その保全・改善に努める。
人と河川とのふれあいの確保については、親水性を考慮して整備した空間の保全に努める。
景観については、地域住民や関係機関等と連携を図り、沿川と調和した地域文化としての水辺景観の保全・継承に努める。
第5節 河川の維持に関する事項
堤防、護岸、床止め等の河川管理施設に関して、定期的に点検、巡視等を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行うなど、洪水時等にその機能が確実に発揮されるよう、適切に維持管理を実施する。
第4章 河川整備の実施に関する事項
第1節 河川工事の目的、種類及び施行場所並びに設置される河川管理施設の機能
本整備計画の目標は、洪水による災害の発生の防止又は軽減、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持並びに河川環境の整備及び保全としている。
(1)洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
河川整備計画の目標を達成するための方策として、氾濫域の資産の集積状況、土地利用の状況等を総合的に勘案し、流量配分図に示す目標流量に対して、堤防の整備や河道掘削等により、家屋の浸水被害を解消させるための対策等を実施する。
実施にあたっては、効果的な整備の時期等について、国、関係市町村、関係機関と調整を図りつつ、計画的に整備を進める。
その際、動植物の生息・生育・繁殖環境、水質、景観等の保全に配慮するとともに、発電用水や農業用水等の河川の水利用の現状を調査し、支障なく適正な水利用が行えるよう、また、人々が川に親しむことができるよう考慮する。農業用水の取水施設に影響がある場合は、事前に関係者と協議・調整を行う。
また、工事期間中、長期にわたる濁水の流出により、魚類等に影響を与えることが懸念される場合には、漁協等の関係機関と連携し、必要な措置を講ずることに努める。
河川工事の施行場所は次頁以降のとおりである。
1) 家屋の浸水被害を解消させるための対策
河積の不足している区間や、堤防が整備されていない区間、堤防の高さが不足している以下の区間において、堤防整備や河道掘削等を実施し、流下能力の向上を図る。
河川名 | 番号 | 整備を予定する区間 | 延長 |
---|---|---|---|
利根川 | 1 | 坂東橋~第一利根川橋 | 約2,200メートル |
利根川 | 2 | 宮田橋上流 | 約800メートル |
利根川 | 3 | JR上越線第三号橋梁上下流 | 約1,100メートル |
利根川 | 4 | 久呂保橋上流~戸鹿野橋上流 | 約1,200メートル |
利根川 | 5 | 月夜野大橋下流~月夜野橋 | 約2,000メートル |
利根川 | 6 | 湯原橋上流 | 約400メートル |
午王頭川 | 7 | 利根川合流点上流~新大久保橋上流 | 約1,700メートル |
赤谷川 | 8 | 日和橋下流 | 約200メートル |
※今後の詳細な測量・設計の実施により、整備を予定する区間の延長が変更することがある。
※今後の状況の変化等により、必要に応じて本表に示していない場所においても施行することがある。
利根川
利根川は、大水上山を水源として関東地方を北から東へ流れ、太平洋に注ぐ一級河川である。
本整備計画の対象区間は、概ね全区間で流下能力は確保されているが、一部で地盤高が低く流下能力が不足している区間があることから、下流から上流に向かって部分的な河川改修を実施していく。
なお、利根川上流圏域の下流は、県管理区間の利根川中流圏域となっていることから、本圏域の整備計画の実施期間内における利根川中流圏域の河川整備の進捗を考慮し、本圏域では河道目標流量を6,000立方メートル毎秒として整備を実施していく。
また、整備を予定する区間には蛇行箇所が多数存在することから、水衝部での洗掘や侵食対策を検討し、要対策区間において護岸工・根固工・水制工等を整備していく。
改修にあたっては、良好な河川環境を極力保全するために、河道部の改変は可能な限り避け、現況の自然を保全するとともに、親水性にも配慮した河岸整備を行う。
利根川 1 坂東橋~第一利根川橋
- 施行区間: 坂東橋~第一利根川橋
- 延長: 約2,200メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工等
利根川 2 宮田橋上流
- 施工区間: 宮田橋上流
- 延長: 約800メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工、掘削工等
利根川 3 JR上越線第三号橋梁上下流
- 施工区間: JR上越線第三号橋梁上下流
- 延長: 約1,100メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工等
利根川 4 久呂保橋上流~戸鹿野橋上流
- 施工区間: 久呂保橋上流~戸鹿野橋上流
- 延長: 約1,200メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工、掘削工等
利根川 5 月夜野大橋下流~月夜野橋
- 施工区間: 月夜野大橋下流~月夜野橋
- 延長: 約2,000メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工等
利根川 6 湯原橋上流
- 施工区間: 湯原橋上流
- 延長: 約400メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工等
午王頭川 7 利根川合流点上流~新大久保橋上流
- 施工区間: 利根川合流点上流~新大久保橋上流
- 延長: 約1,700メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工、掘削工等
赤谷川 8 日和橋下流
- 施工区間: 日和橋下流
- 延長: 約200メートル
- 整備内容: 築堤工、護岸工等
2)堤防強化対策
今後の堤防点検結果を踏まえ、必要に応じて堤防強化対策を実施する。
(2)河川環境の整備と保全に関する事項
河川環境の整備と保全を図るため、動植物の生息・生育・繁殖環境、景観、河川利用等について配慮し、自然と調和を図った整備と保全を行う。自然環境の保全・再生に当たっては、地域住民や関係機関と連携し、流域に広がる動植物の生息・生育・繁殖場所を広域的に結ぶ生態系ネットワークの形成に努める。
- 動植物の生息・生育・繁殖場所については、設計段階や工事着手前など段階ごとに、学識関係者や漁協等の専門家の意見を聴くとともに必要に応じて調査を行い、それをもとに対応策を検討・実施するなどして保全に努める。落差工等の横断構造物を設置する場合は、砂防部局とも連携し、必要に応じて魚類の遡上に配慮した設計を行う。
- 絶滅危惧種等の希少な動植物が生息・生育する可能性があるため、必要に応じて環境調査の実施を検討するとともに、実施した場合はその調査結果を基にした絶滅危惧種等の保全対策を検討する。
- 河岸保全のためコンクリートによる護岸整備を行う場合でも、川の流れを固定化しないようにするなど、河川の自然の営みを活かした川づくりにより、地域の河川景観を活かし、動植物の生息・生育・繁殖に適した水辺環境の創出に努める。併せて、地域の暮らし、歴史及び文化との調和並びに多様な河川風景に配慮し、沿川と調和した河川景観の保全及び形成に努める。
- 水辺に近づけるよう、必要に応じて緩傾斜護岸、斜路、階段等を整備する。特に、市街地を流れる河川や公園等、人々が集まる施設がある河川では、地域の住民の意見を聴きながら、人と河川とのふれあいの場となるよう配慮する。
- 水辺景観の保全及び河川利用推進の観点から、河川の豊かな水量を保持するため、農業用水等の利水者と調整を図るとともに、関係機関の環境部局及び地域の住民と連携して河川の水質の改善に取り組む。
河川空間の活用として、「河川空間」と「まち空間」が融合した良好な空間形成を目指す「かわまちづくり」を、市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者が連携して進める。
第2節 河川の維持の目的、種類及び施工の場所
河道に堆積した土砂や繁茂した草木等が河川管理上支障となる場合は、河川環境に配慮しつつ、堆積土の除去、立木の伐採、草刈り等の必要な対策を行う。
堤防の変状、異常、損傷等を早期に発見することを目的として、適切に堤防点検、巡視等を実施する。堤防が不等沈下、法崩れ、ひび割れ等により弱体化した場合は、堤防の嵩上げや腹付け等の必要な対策を実施し、堤防の機能が維持されるよう努める。
護岸の亀裂等、河川管理施設の異常を早期に発見するため、定期的な河川の巡視を行うとともに、異常を発見した場合には、速やかに修繕等の必要な対策を行う。なお、修繕、改築等を行う場合にも、河川環境の回復・保全に努める。
取水堰や橋梁等の占用施設で、河床及び河岸の洗掘や流下断面の阻害など河川管理上支障となるものについては、施設管理者と調整し、適切な処置に努める。また、施設の新築や改築に当たっては、施設管理者に対して、治水上の影響及び河川環境の保全について指導する。
地域の住民と協力して良好な河川環境を維持するため、草刈り、河川清掃等の河川愛護活動を積極的に支援する。また、環境調査や保全活動の情報を共有するなどして、地域との協働による環境保全に努める。
第5章 河川情報の提供、地域や関係機関との連携に関する事項
第1節 河川情報の提供に関する事項
河川整備目標の実現までには長期間を要すること、また、計画を上回る規模の降雨が発生する可能性もあることから、河川整備によるハード対策と併せ、情報提供等のソフト対策を実施する。降雨の状況や河川水位の情報をリアルタイムで収集し、関係機関や地域の住民に提供することにより、水防活動等の対策の支援を迅速に行い、洪水被害の軽減を図る。
ホームページへの掲載、パンフレットの配布、イベントの開催等により、河川に関する様々な情報の提供を行い、河川整備に関し広く理解を得られるように努める。
洪水時の住民の的確な避難行動につながるよう、「施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水に備える水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、危機管理型水位計や洪水監視カメラの整備、水位周知河川等の追加指定、市町村による洪水ハザードマップ作成支援のため、洪水浸水想定区域図の作成及び更新を行う。
住民の防災意識の向上を図るため、カスリーン台風等の既往災害や今後発生する洪水や被害の記録を残し、これを周知するとともに、地域に伝わる歴史的な治水の技術や水防の知恵が継承されるように努める。
第2節 地域や関係機関との連携等に関する事項
(1)常時の連携
河川整備の実施に当たっては、河川事業、排水事業、砂防事業、治山事業等の関連事業を実施する国や関係市町村、県関係部局と連携を図る。
洪水時の連携強化のために、また、防災情報伝達演習や重要水防箇所の点検等を関係機関と実施する。
本圏域は観光地が多いため、外部から来訪した観光客が洪水時に円滑に避難出来るよう、避難経路の掲示や音声案内機器の設置等について関係市町村や関係機関と連携し、検討する。
圏域全体を視野に入れて適正な河川管理を行うために、開発行為や土地利用(土地利用規制も含む)について関係市町村や関係機関と連携を図る。
良好な河川環境の保全を継続するために、地域の住民の理解を求めるとともに、地域の住民との連携及び協力体制の確立に努める。
従来から行われてきた流域住民の河川愛護および美化活動等の取組については、それらの活動を行うための場の提供等、今後も協力や支援を行う。また、河川を身近な環境教育の場とし、河川に関わるイベントや学習を通じて、地域住民の河川愛護や美化に対する意識の高揚に努める。
住民の防災意識を高めるために、出前講座等による防災教育を実施するとともに、自主防災組織の立ち上げ支援等について、関係市町村や関係機関と連携し、検討する。
水質事故による油等の流出が発生した場合は、事故状況の把握、関係機関への連絡、被害の拡大防止措置、河川や水質の監視、事故処理等を原因者や関係機関と協力して迅速に行う。
公園やゴルフ場等の占用施設の管理者と連携し、洪水時の避難経路の確認や流下断面阻害物の有無の確認等を行い、問題があれば指導する。
(2)洪水時の連携
流域住民の避難判断が速やかに行われるよう、水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、水害ホットラインや水害対応タイムライン等を構築するなど、さまざまな手段により国、市町村、報道機関、消防、警察等の防災関係機関との連携を強化し、防災情報の共有や情報伝達体制の充実に努める。
(3)渇水時の連携
国及び関係都県等で構成する利根川水系渇水対策連絡協議会で渇水対策(取水制限)が必要と判断された場合は、関係利水者による円滑な協議が行われるよう、群馬県渇水対策本部等を通じ情報提供に努めるなど、関係機関と連携して被害軽減に努める。