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土地収用等に関する裁決の手続について
事業認定
事業認定とは、国土交通大臣又は都道府県知事が、その事業が真に公共の利益となるものであること等を確認し、起業者に対して、土地等を収用(又は使用)することができるという地位を与える制度です。
土地調書及び物件調書の作成
起業者は、裁決申請にあたっては、事業の認定の告示があった後、土地調書及び物件調書を作成しなければなりません。
土地調書及び物件調書は、裁決申請書及び明渡裁決申立書の添附書類となるもので、収用しようとする土地及び物件の状況や権利関係が記載されます。これらは、裁決にあたっての証拠書類となります。
調書作成に当たっては、起業者、土地所有者及び関係人の立会いと署名・押印が必要となっています。 立会いの際に土地調書や物件調書の内容に異議のある者は、調書にその内容を附記して署名押印することができます。
この場合、異議が附記された部分については、収用委員会の審理において、争うことができます。ただし、異議を附記しなかった事項については、記載の内容が真実でないことの立証をしないかぎり、審理において異議を述べることはできません。
なお、起業者は、土地所有者及び関係人のうち、署名押印を拒んだ者、署名押印をできない者があるとき等は、市町村長(職員)による署名押印を行い、調書を作成することができます。
裁決申請書及び明渡し裁決申立書の作成
起業者は、土地調書及び物件調書の作成後、裁決申請書及び明渡裁決申立書を作成し、収用委員会へ提出します。
「裁決申請書」は、土地の権利を取得又は使用するためのものであり、「明渡裁決申立書」は、土地及び物件の明渡しを求めるためのものです。
なお、土地所有者及び関係人は、起業者に対し裁決申請の請求を行うことができ、また、明渡裁決の申立てを、直接、収用委員会に申し立てることもできます。
裁決申請書及び明渡裁決申立書の受理
収用委員会は、裁決申請書及び明渡裁決申立書が法令に規定された形式に適合しているかを審査し、適合しているときは、受理します。
裁決申請書及び明渡裁決申立書を受理すると、市町村に対し関係書類を送付するとともに、土地所有者及び関係人に裁決申請及び明渡裁決申立てがあったことを通知します。
公告・縦覧
収用委員会から関係書類を送付された市町村は、裁決申請があった旨等を公告し、送付された関係書類を2週間の縦覧に供します。
縦覧期間中は、裁決申請書及び明渡裁決申立書等を閲覧することができます。閲覧方法については、縦覧を行っている市役所又は町村役場へお問い合わせください。
意見書の提出
土地所有者及び関係人は、市町村における縦覧期間中に、収用委員会に対し意見書を提出することができます。
ただし、意見書には、事業認定に対する不服、その他収用委員会の審理に関係のない事項を記載することはできません。
なお、縦覧期間経過後に意見書が提出された場合であっても、収用委員会が相当の理由があると認めた場合には当該意見書を受理することがあります。
裁決手続の開始決定
収用委員会は、縦覧期間を経過した後、裁決手続の開始決定を行い、法務局(登記所)に、収用しようとする土地及びその土地の権利について、裁決手続の開始の登記を嘱託します。
この登記が行われると、その土地の権利(所有権等)の相続などを除き、権利の移動は起業者に対抗できなくなります。起業者や収用委員会は、この登記の時点での権利者を当事者として扱うことになります。
審理
収用委員会は、裁決手続の開始決定の後、審理を開始します。
審理は、収用委員会が起業者、土地所有者、関係人等から裁決を行うために必要な事項を聞くために行います。
審理は公開で行われ、土地所有者、関係人も出席することができます。審理の日時、会場等は、土地及び物件所有者並びに関係人に対し、あらかじめ通知されるとともに、県ホームページに掲載されます。
審理において必要な意見が出揃ったと判断されたときは、審理を終了します。審理に欠席された場合には、そのまま終了することがありますので、ご注意ください。
意見書の提出、意見の陳述
起業者、土地所有者及び関係人は、損失の補償に関する事項については、審理において新たに意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができます。
しかし、事業計画や事業認定に対する不服、任意交渉に関する不服などは審理は関係がないので、意見書に記載し、又は審理において意見を述べることはできません。
調査
収用委員会は、必要があると認めた時は、現地において土地又は物件を調査することができます。
また、現地調査以外にも、資料の提出を命じたり、鑑定人に鑑定を命じることもできます。
一方、起業者、土地所有者及び関係人も、提出した意見書や口頭で述べた意見の内容を証明するために、収用委員会に対して資料を提出すること、必要な参考人を審問すること、鑑定人に鑑定を命ずることを申し立てることができます。
裁決
収用委員会は、必要となる調査・検討を行い、審理が尽くされたと判断した時は、収用委員会としての最終判断である裁決を行います。
裁決は、裁決書の作成・送達によって行われます。
裁決には、裁決申請に対する権利取得裁決と、明渡裁決申立てに対する明渡裁決があります。
通常、これらの裁決は、一通の裁決書によって作成され、送達されることによって効力が生じます。
権利取得裁決によって決められた権利取得の時期までに、起業者は補償金を支払い、土地の権利を取得します。
また、明渡裁決によって決められた明渡しの期限までに起業者は補償金を支払い、土地所有者や物件所有者には、当該期限までに土地や物件を明渡す義務が生じます。
なお、土地に関する所有権以外の権利(借地権等)は、それぞれ権利取得の時期をもって消滅することとなります。
和解
裁決申請後であっても、裁決前であれば、当事者同士の話合いにより、和解をすることができます。
このときは、収用委員会において和解の内容を審査した上で、和解調書を作成することができます。
和解調書が作成されると、裁決があった場合と同じ効果が生じます。また、和解調書が作成されると、その内容について争うことができなくなります。
また、裁決前であれば当事者間で任意契約をし、裁決申請を取り下げることもできます。